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今日は米沢城を出る日だ。
門の前には、梵天丸様と輝宗様がいる、私たちを見送ってくれるみたいだ。
だけど梵天丸様はまだ拗ねてるようだ。
それに思わずため息がする。
すると、梵天丸様の肩がビクリと揺れて恐る恐るといったように私の顔を上目使いに見てくる。
『梵天丸様、私、もう行きますよ。』
そう言えばコチラをはっきり顔を上げた梵天丸様、その目は少し赤くなっていた。
泣いたのか。
嬉しくなって笑えば「何で笑うんだよっ」と頬を膨らます梵天丸様。
それに、また笑えば更に頬を膨らます梵天丸様の「何で俺だけ…」という呟きにまた顔がゆるむ
『梵天丸様言っときますけど私も、すぅごぉく寂しいですよ。
だって、ここまで、仲良くなれたのに、』
そう微笑みかければ、っじっと、私の顔を見て何も言わない梵天丸様。
『え?もしかして、仲良くなれたと思ってたのって私だけですか?』
そう言えば門の外で名前行くよーと佐和さんの声が聞こえる。
それに振り向いて答えようとすると、いきなり梵天丸様が着物の襟もとを掴んで引っ張ってきた。
なんだ、なんだと思ってると、唇に触れた柔らかいもの。
これは、まぁ、所詮接吻というやつで、驚いて梵天丸様の方を見れば耳が真っ赤で
ボソリと聞こえた呟きは「待ってるからな。」で、何だ、この可愛い生き物。
何か言おうとすればグイっと背中を押されて門の外に出されてしまった。
「名前ちゃんも隅に置けないねぇ。」
そういえば、梵天丸様に接吻は親愛する人との挨拶だと教えたっけな。
頬っぺたにするものだって言ってなかったっけ?
これは言ってらっしゃい、って意味なのかな?
それなら嬉しいなぁ。
サブが何か言っているが無視だ、無視。
重弥さんと佐和さんの生温かい視線も無視無視。
また会えるまでバイバイ
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