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私たちが、米沢城にやってきて随分たった。
本当は、数日で旅に出るつもりだったらしいけど奥州の地は他の国に比べれば雪が降りだすのが早くて、旅に出れなくなったらしい。
なので、冬の間はここで世話になるそうだ。


重弥さんたちは他の兵に混じって仕事をしているみたいだ。
まぁ、私は子供だから梵天丸様と勉強したり鍛錬などしている

まぁ、鍛錬って言っても私は体力作りみたいなものしかしてないけどね。
だけど、その内自分の身位は守れるようになりたいな。


この城にいる間、私は梵天丸様の母上にも会った。
梵天丸様には優しく笑いかけていたけど梵天丸様に見えない所で私は睨まれた。

あれか小汚い娘め家の可愛い梵天丸に近づくなってか。

睨まれるのは恐かったけど、まぁ、梵天丸様から私の所に来るんだから仕方ないよね。


「名前今日は天気だ!」


そして、何気に私の英会話教室も続いてたりする。


『はい。ではまず、晴れの日のように良く日の照る日はsunnyと言います。』
「さにー」
『ん〜もう少し舌を巻いて、スァニーみたいな感じです。』
「スァニー、スァニースァニー、スァニー…sunny?」
『おぉ、そうです。sunnyです。』
「sunny、sunny、sunny、sunny!!」


嬉しそうにsunnyと繰り返す梵天丸様、うん、可愛いな。
本当に私と年が近いのか?って、私精神年齢はほとんど大人だったんだ。


『あ、ところで、梵天丸様お知らせがあります。』
「?」


なあに、と首をコテンと傾げる梵天丸様。

ちなみち今の季節はもう春だったりする。
楽しい時の流れは過ぎるのが早いと言うが、まさにその通りだ。
今ではすっかりあのミミズが這ったような字さえ読めるようになる程私たちはこの城にいたのだ。

私たちはここに居座る気はない
だから明日、明後日にでも私たちはこの城を出ることになった。


そのことを、告げると目を見開いて驚いてから顔を歪める梵天丸様。


「な、何んで!?名前は、ずっとここにいるんじゃないのか!?」


泣きそうな顔で私にすがりついてくる梵天丸様


『いいえ、私たちは始めから春になったらここを出るつもりだったんです。』


泣きそうな梵手丸様の手をっぎゅと握りなだめるように言う。

するとその手をっぎゅと握り返してくる。


「い、嫌だ!名前はずっと、ここにい、いるんだ!!」


ついに涙を流しながら声を上げる梵天丸様。

懐いてくれてるのはわかっていたけど、こんなに惜しんでもらえるとは思わなかった。

嬉しいような、寂しいような……複雑だ。


『梵天丸様、泣いてはいけません。
きっと私たちはまたこの地に参ります。
それまで少しの辛抱です。』


そして、流れた梵天丸様の涙を優しく拭き取ってやった。





寂しくないと言ったら嘘になる


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