「お前、菊とは違うあるか」 「私たちは確かに似ているかもしれません。でも」
私は国ではなく、ただの島のようなものですから。 ふわふわと笑う彼女は掴みどころがなくて、自分の弟のような存在がどれだけ苦労したのかが手に取るようにわかる。 あぁ、こいつ、心を開いてねぇある。 先住民は追い出され、土地は勝手に荒らされ、少ない自分の一部まで略奪され続けた彼女は心を閉ざしてしまっていた。 こんなに、小さいというのに。
「我だと、力になれないあるか」 「…王さん?」
ざざ、と小さな体が後退りする。 手にさえ触れることが躊躇われるだなんて思わなかったこちらとしては、予想もしていなかったことで。
「すみ、ません…!」
慌てたように彼女が走り去って行く。 その姿を見送ってしまう自分はどんなに滑稽に写っているだろうか。 ぼんやりと口ずさんだメロディーは、彼女が幼い頃に自分に聴かせてくれたものだった。
─口ずさむ旋律が─
(たくさんの時が経って、変わってしまったあるか) (それとも、周りの影響か)
2010.02.01 北海道あたり。
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