パーティー会場につくと幼なじみはアタシ男捕まえに行くから!じゃね!と言って俺を残して消えた。
 
女って怖い生き物だな…
 
 
少しぼーっと突っ立っていると目がギラギラした男達に何回も声をかけられたので怖くなり端の方で小さくなっていた。
 
めったにないから、とテーブルに並べられた高そうな料理をお皿に取り分け、ちまちまと食べながらこのパーティーの主役の彼を見た。
 
 
彼の周りには沢山の人だかりが出来ていた。主に女子が。
 
これじゃあ話し掛けることもできないな…
思う存分料理を堪能したら帰るか。
 
 
と思い、空になったお皿に再び料理をのせ、食べていると、
 
 
 
「食べ方綺麗だね。料理ずっと食べてるけど気に入ってくれた?」
 
と声をかけられ振り返ると彼が立っていた。
 
びっくりして声も出せずに一生懸命首を縦に振っていると、唐突に俺の手を引っ張った。
 
 
「ちょっとこっち来て。」
 
彼に引っ張られるままついていくと人気の無い小さめの庭についた。
 
 
「あの、さ。一目惚れしちゃったみたいなんだ、…君に。付き合ってくれないか。」
 
優しく微笑みながら言う彼は幻ではないのだろうか。

彼からの告白に舞い上がり、気付いたら首を縦に振っていた。
 
 
そんな俺の反応にもっと笑顔になり唇を寄せてきた。
 
「んっ…」
 
もう幸せすぎて死にそうだ。
 
「ん、ふぅ、…やぁ、あふ、ん…」
 
と思っていると口腔内に彼の舌が侵入してきた。
 
「んや、ちょっ…ちょっとまっ、ふ、ん…や、」
 
だんだん増す激しさに耐えられなくなって制止の声を掛けるが彼は止まらない。
その上胸をまさぐり始めた。
 
 
ちょ、胸は駄目だって!バレるっ…!
 
 
焦って彼の胸を突き飛ばした。
 
「お、おれっもっ、好きだけど、…ごめんなさい!」
 
と息絶え絶えに言い、その場から走って逃げた。
致命的なミスをしたとは知らずに。




 
 

こうして俺のシンデレラ物語は幕を閉じた。
きっと女だったらハッピーエンドだろう。
でも俺は男。今日のキスを餞別に彼を忘れてしまおう。

 
 
 
 
 
次の日、幼なじみに全て話した。
そして彼を諦めるということも。
 
幼なじみは少し泣きそうな顔をしながらアンタがそれでいいならいいわよ、と言ってくれた。
 
やっぱりコイツは良い奴だ。
 
 
「でもあれよね!出会って即告白してディープなんて彼も相当なタラシね!王子様の仮面をかぶった狼!萌え!偽王子×女装平凡萌え!たぎるうううう!」
 
と言った彼女に殺意を感じた俺は断じて悪くない。
 
 
でもしんみりしてた気持ちを吹っ飛ばしてくれたから彼女なりの慰め方だったのだろう。
 
 
これからは前に進める気がする。
 
だから今日だけ、今日だけでいいから少しだけ泣かせて。
 
 







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