*「よっつのハート。」からの続き













早朝の青空は、あの日とそっくりでひどく澄んで見えた。

窓を開けると流れてくる風さえも、あの時の香りを運んできてくれるような気がして、胸一杯に息を吸う。



とても、懐かしい夢を見た。

今でもひとつひとつを思い出せる程、俺にとって大切な、思い出のあの日の夢を。



――――――まさか、今日見るなんてな。



あの時彼女から貰ったクローバーは、押し花にしてしおりにして、今でも大切に持っている。
まぁ、あいつは忘れてしまったかもしれないけどな。



久々にウィンドルに帰って来るという彼女を迎えに、俺は屋敷を出た。











久しぶりに会ったキオノは、あの頃よりずっと大人になっていた。まぁ、当たり前なんだけどな。
それに、なんというか…………―――――凄く、綺麗になったと思う。正直驚いた。こんなこと恥ずかしくて言えないけど。

でも、俺を見る無垢な瞳や眩しい笑顔は全然変わってなくて、なんだか嬉しかった。



「本当にラントの町、久しぶりだなぁ。皆元気そうだったし」

「あぁ、シェリアも会いたがってたぞ」

「シェリア!懐かしいなぁ、よく一緒に遊んだよね」
「今は救護団にいて忙しいから、今日は会えないみたいだけどな」

「えっ!シェリアあんなに体弱かったのに、大丈夫なの?」

「あぁ、まぁいろいろあって、今は元気に国中をまわってるよ」

「そうなんだ。頑張ってるのね!」



ストラタの首都、ユ・リベルテにいるヒューバートの友人、マーレン。
俺が騎士学校へとラントを飛び出した後、キオノは彼女の下で働き、そこで錬石や錬晶のことについて学んでいたそうだ。

お互いのことや、昔話に花を咲かせている内に、あっという間に時間が過ぎてしまった。


――そろそろいいかな?




「なぁキオノ。ちょっと行きたいところがあるんだけど、いいか?」

「?…うん、いいよ」









さらさらと心地良い風が、原っぱの草花と、少し大きくなった俺達を優しく撫でていく。






「わぁ………!ここ!」

「覚えてるか?」

「うん、凄く懐かしい!!ここで皆で遊んだんだよね」


柔らかい風に目を細めながら、キオノは微笑んだ。




「………あ、あそこ」




彼女が指差したのは、あの日のクローバー畑。


「………アスベル、覚えてる?小さい頃、ここでアスベルがよつばのクローバーくれたの」

「あぁ、勿論」

「今思い返すと、本当に私達って仲良かったよね!だってアスベルってば………」

「あ、あれは、あの時はちゃんとした意味わかってなかったし……」

「ふふ、やっぱりそうだったんだ。
―――凄く嬉しかったんだけどね」

「――――え」



はっとしてキオノを見ると、彼女は背中を向けてしゃがんでいて、表情は窺えなかった。

キオノはクローバーの中に手を潜らせるようにして、カサカサと揺らしている。



「ねぇアスベル、四葉、ないかなぁ」

「、え?」



突然の言葉に驚いていると、ついと出された、四枚の葉。

それは、四葉のクローバーで出来たしおりのような物だった。




「アスベルと久々に来れた記念にさ、ね?」



しおり越しに見える彼女の、木漏れ日のような笑顔。



どくん、と心臓が跳ねる音が身体中に響いて、俺の意識はその一瞬の笑顔と駆けるような自分の心臓の音に支配された。


頬が熱い。


御守り代わりにポケットに入れた、幼い彼女のくれたよつばに無意識に触れた。その指もあたたかかった。


そして今度は、"それ"に手を遣る。







「―――キオノ!あったぞよつば!」


「えっ!本当に?」



ようやくこっちを振り返ったキオノの顔は、幼かったあの頃の表情そのもので、なんだか不思議な気持ちになった。



「あぁ。―――手、出して」

「え………」



返事が返ってくるより前に、キオノの左手を取る。

そして、太陽に照らされて光る"それ"を、ほっそりとした薬指にそっと通した。




「―――っ…アスベル、これ」




きらり、答えるように彼女の指で輝く、銀色の指輪。

そこにはよつばのクローバーが象られていて、そのハートのひとつには、小さな光る宝石が深い緑色を放っていた。




「エメラルド……――?」

「あぁ、そのハートが、俺の気持ちで出来てる葉っぱ。」




エメラルド……と呟いて、彼女はその石が持つ意味を一つ一つ挙げていく。



『精神と肉体への安らぎ』『誠実』『幸福』………そして、




「―――――夫婦愛」



辿り着いた俺の気持ちに、彼女は面白いくらいに顔をぼんっと赤らめた。



「っはは、さすがにそれは気が早いって思ってるけどさ」


予想以上に、可愛い顔だったので、つい笑ってしまう。
…いや、照れ隠しかもしれないな。



「俺も嬉しかったんだ。あの日キオノから貰った、キオノの気持ちが詰まったよつばのクローバー」


そっとしおりを取り出すと、彼女は大きく目を見開いてそれを見た。


「だから俺もあげたかったんだ。キオノによつばのクローバーを、さ」





白くてあたたかい、彼女の両手を自分の両手で包む。





「――――好きだ、キオノ」







帰り道、
繋いだ手、光るハート。





(ねぇねぇ、アスベル)(―?、何だ?)(あのね……エンゲージリングも、よつばがいいな)(――!!)




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いやぁ自分でも書いててびっくりした(笑)
二人とも気早すぎだろうw
捏ベル過ぎて本当に申し訳ないです



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