「あぁーっ!!」


帰って来たキオノの第一声は、ボクを指差しながら。


理由は簡単。「おかえり!」って振り向いたら、ふてくされたキオノとご対面。


「何それぇっ」

「えへへ、クレアが作ってくれたんだぁ」


さくさくしっとりのお手製ピーチパイは、もうお皿には残ってない。最後のひと欠片を口に放ると「あぁっ」と声を漏らしてキオノはがくっと項垂れた。



「食べたかった……」

「惜しかったね、もうちょっと帰るのが早かったらなぁー」

「うぅー…」

「まぁ誰かさんが食い意地張ってるから、さっさと食べといて正解だネ」

「それはマオの方でしょ!」


キオノはむぅぅと唸って子供のように睨んで来た。ボクより年上なのにそんな顔するんだから可愛いよね。


でも、次の瞬間、その表情はくるりと変わる。

?、…何その笑み?



「ふーんだ、じゃあマオはもうおやつ食べたんだよねっ」


じゃあいらないよねぇー。ニヤリと笑いながらキオノが出したのは、


「…あー!ソレってバルカの専門店でしか買えない、たっぷりカスタードのシュークリーム!!」

「ほほほ、流石マオさんしっかり押さえてらっしゃる」



わざとらしく口に手を添えると、キオノは魅惑の白い箱を開ける。

一日数量限定のそれがふたつ、バニラビーンズの甘い香りを漂わせながら中に入っていた。


「うわぁー!美味しそぉ!」

思わず覗き込んだら、キオノはそこからさっと箱を奪って、不敵な笑みを見せる。


「マオと一緒に食べようと思ったけど、そっかーマオもうおやつ食べたのかー」

「えぇっ?」

「んー残念。でもしょうがないね。じゃあ私だけで食ーべよっと!」


言うや否やキオノはシュークリームをひとつ取ると、ぱくりと頬張った。


「あぁー!ち、ちょっと、ボクも食べたい!ちょうだいってば!ねぇっ」

「だーめ、クレアのピーチパイ独り占めしたんでしょ!んー!美味しいぃ…」

「えぇっクレアのピーチパイならまた食べられるじゃん!ソレ、開店直後に行かないと売り切れちゃうんでしょ!?ボクまだ食べたこと無いのにっ」

「私だって初めてよ!まさか二個も食べられるなんてねーっ、…うわぁクリーム凄ーい!」

「だからぁ!ちょうだいってばー!」


背中を向けて食べ続けるキオノに何度言っても、背中をポカポカ叩いても、嬉々とした顔の向こうでちらつくシュークリームは着々と小さくなっていくばかり。
濃厚そうなクリームがシューからどんどん溢れ出ていて、背中越しから見てもとっても美味しそう。



もー!と、キオノの腕をぐいっと引いたその時。




べちゃっ




「…………あ」


「……ちょっとマオー!!」


二個目のたっぷりカスタードが、キオノの顔にべっとりとくっついてしまった。


「ご、ごめん!」

「もう、やっぱり食い意地張ってるじゃない」


キオノは怒るというより呆れたように言って、付いたクリームを指で拭っている。



…………むぅ、つまんない。



そりゃ今のはボクが悪かったけど、そんな風に言われるのも、意地悪返しされたのも、シュークリームばっかりにキオノが夢中なのも、つまんない。


………ボクだって最初は、キオノと一緒にピーチパイ食べようと思って待ってたのに、キオノが帰って来るのが随分遅いから……

最後のひと切れ、すっかり冷めちゃってたんですけど。



と、その間にも手に残ったシューからまだまだカスタードがとろとろと流れ出ていて、おっと!とキオノは危うく垂れそうなそれに吸い付いた。




拭いきれず頬に残る、淡い色のクリーム。




いろいろ悔しかったので、丁度キミがしてるみたいにボクもそれを吸い取ってみました。




ちゅって音もちゃんと鳴らして離れれば、ほら。
もうキミは桃を通り越して熟したイチゴみたい!



「……ちょ…マオっ」

「えへへー、ごちそうさま!」





口に広がるカスタードの味は、甘くて甘くて、とっても美味しい。







Sugar or Sweet?




(子供扱い、しないでよね!)








******
英語自信無いです←ぇ
しばらくシュークリーム食べてないなぁ…

暗めな話が多かったこともあって、とにかくじゃれたかった(笑)
マオ大好きだぁぁぁっ



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