「現実逃避がしたい」
現状把握する余裕なんてない。
異世界?なにそれ美味しいの?モビーの居場所は分からない。エースやセツの声は聞こえない。せめて行ったことのある島にでも能力使って行こうとしても位置が捕捉出来ない。
「…どうしろってんだよ」
能力は一応使えるみたいだが…。
「疲れた」
正直、ここまで大真面目に考えていたがもう訳が分からなすぎて頭が痛くなってきた。もういいよな?そろそろ考えるの放棄してもいいよな?
思い立ったら吉日(?)脚を投げ出して、身体を支えていた腕の力を抜いてそのまま後ろに倒れた。背中に貝殻が刺さった。痛い。俺が小さく呻いたと同時に、後ろから小さな気配がした。
気配は森の中から。獣か?それとも、
「誰だ?」
「ひっ!」
身体は起こさず、頭と視線だけを森に向ける。手前にあった木の裏側から、小さな悲鳴みたいな声が聞こえてきた。木はそこまで太いわけではないからちらちらと服の端が見えている。髪も僅かながらに揺れているのが見えた。
頭の位置と声の高さから考えると、恐らく子供。
「子供がこんなところにどうした?」
体制はそのまま。無闇に動いて子供を怯えさせると話ができない。なんせ、この訳の分からない場所で出会った初めての人間だ。ちゃんと話を聞きたい。
「…っえ、えと……うみを…みに、きたの」
小さな声。でも、しっかりと自分の意思を伝えてきた。成程、海か。
「こっち来いよ」
「、え…!?」
「そこからじゃ見えにくいだろ?」
悪いが、話を聞かせてくれるまで帰すつもりはないぜ?
▼あれ?姉さん、悪役のセリフですよそれ。
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