決めて流した 1






それで結局どうなったかというと、この、ぼくらの目の前で顔を手で覆いさめざめと泣き真似する赤田くんが答えだ。




「お前ら、実は鬼だろ!この鬼畜!!」


「半分は不正解だぜ。」




と、濃い灰色で草臥れた感じのコートを着て片手にサバイバルナイフのような物を持った零崎が笑いながら言った。

この物語の殺人鬼である。





「そうだね。それで半分は正解だよ。因みにその格好よく似合ってるよ」




と、銀色に鋭く光る鎧(アルミ製)と同じく銀色に鋭く光る盾(アルミ製)と剣(アルミ製)を持ったぼくは笑わずに言った。

赤他くんから奪い取ったーーじゃない、貰った謎の騎士役である。




「確かに、元からそうだったみたいだぜ」


「うっせー!お前らそんなこと言って確実に楽しんでるだろ!!」




やや涙目で黒髪の綺麗な美少女設定の赤谷くんが叫んだ。
ヒロインだよヒロイン。全く、大役じゃないか。ぼくがやってたらきっと!この大役は大厄になっていたに違いないだろう。

いやはや、本当によかった。



スカート履いてマンネリ化にならなくてよかった。




「え、そっち?」


「え、もしかして声に出てた?ごめんごめん忘れて」


「長年の勘だ」


「なるほどな。因みにぼくと零崎って会ってからどのくらいたったっけ?」


「大雑把に言って一年も経ってねぇな」


「短いな!!」


「因みに零崎がふらりと旅に出て顔を見てない時間をいれないとざっと半年位かもしれないね」


「さらに短いな!!」




うーん。どんな格好をしていても嗚居くんは突っ込みを怠らないね。流石だ。
まぁ、色々グダグダしたけれど役は決まったし、衣装合わせもしたし台本も渡されたから今日はこれで終了みたいだ。

ぼくも出来るだけ殺人鬼をやりたかったけれど阿形くんにヒロインを押し付け…、じゃなくてヒロイン役と交代してもらった後にしたじゃんけんに負けてしまったのだから仕方ないか。




「突っ込みお疲れ様赤他くん。そういうわけでぼくは帰るよ」


「いつもいつも突っ込みお疲れ様穐田くん。そういうわけで俺は帰るぜ」


「はぁ、お前らほんっとに文脈なく行動するよな…。まぁいいや。本番までに頼むな。特に伊井」


「はいよ」




そうして、ぼくらは帰っていった。
もちろんぼくは一人暮らしなので一人で。だ。

少し零崎がどうやって暮らしてるのか気になったけれど、首を突っ込むと面倒事に巻き込まれる気がしたのでやめた。
さぁて。明日は何が起こるのやら…






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