教室へと戻ったのは、授業が始まってから10分ほどしてからだった。


恭介って奴がこちらを見てくる。一瞬視線を合わせて、教科担当の先生のもとへと行く。


「すみません。木崎くんとトイレに行ったら急に具合悪くなったみたいで、保健室へ付いて行ったら遅れました。早退するそうです。これが保健室の先生から受け取った紙です」

そういって木崎くんの早退届を渡す。

「そうか、わかった。んじゃ席つけ」

「はい。すみませんでした」

もう一度思ってもいない言葉を吐き出し、席へと戻る。その間も視線を感じたがスルーだ。

隣の奴が木崎、大丈夫?と聞いて来たので、多分、とだけ返す。

まだこっちを向いていたのか、恭介って奴が先生に注意を受けた。

( ………バカな奴 )

自分の気持ちも、木崎くんの気持ちも気づかないで。そのくせ俺の気持ちには気づいてわけもわからないまま牽制してくる、って。獣みたいだね。

あんなに可愛い可愛い木崎くんを苦しめてさ。喘ぐ顔も、イくときの顔も、泣き顔も笑顔も怒った顔も、あいつだけが知ってる顔も、全部全部俺のものにしたい。ああ、ずるい。ずるいよ。あいつがずるい。俺が木崎くんへと向けてるこの感情が、木崎くんがあいつに向けてるって思うだけで。

俺はもっと淡泊だと思ってたのになぁ。自分でもびっくりだよ。こんなに危険な感情があって、こんなに欲望に忠実に動いてしまうなんて。

これが本気の恋って奴か。最初は男同士なんて無いだろ、と隣での喘ぎ声を聞きながら耳を塞いでいた。そんでこれをネタにパシりにでもしようかと思った。でも木崎くんなら美しい、って思えた。一目で彼が木崎くんだと気づいた。だって。俺が恭介って奴にガン飛ばしてると睨んでくるんだもん。ああ、ああ、なんて可愛いんだ。恭介って奴は知っていた。昨日木崎くんの部屋から出てくるの見たからね。木崎くんにあの顔をさせてるのは誰?俺?それとも恭介?どちらでも構わない。ただその視線を受けているのは俺だ。恭介なんて知らない。俺が消してやる。俺が塗り潰してあげるよ。木崎くんが望むのなら、恭介だって消してあげる。

まずは恭介の苗字を知ろう。名前よびなんて気持ち悪い。

木崎くん。木崎くん。早く君の名前を呼びたいなぁ。
受け止めて、俺のアイを。
でないと、君を殺してしまうよ?

* もどる すすむ #




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -