あのあと、半ば強引に保健室へと連れて行かれ、早退させられた。
特に体調が悪かったわけではないのでソファでだらりとテレビを見ていた。
今、ひとりは嫌だ。
余計なことをぐるぐると考えてしまうから。
なんで、なんで、なんで。
ただ恭介が好きで。

『可哀想な木崎くん』

可哀想?誰が?俺が?なんで?俺、可哀想なの?
思考が訳の分からない方へと走り出す。それでも思うのは、可哀想でもなんでもいいから、恭介を好きでいたいということ。

―――ガチャ


ドアが開く音がする。
ソファでそのまま寝てしまったのだろう、テレビはついたままだ。
体を起こし、扉の方を見る。

「恭介………」

じゃない。

「ははっ、むかつくなぁ木崎くん。ねぇ、今のってわざと?」

笑顔で俺の部屋へと入ってくるのは、平岡壮一だった。

「なんで、」

「ん?お見舞い」

「お見舞い、って」

「具合悪くないって?えー、じゃあ仮病じゃん」

仮病って。自分が早退させたようなもんなのに………。

「お仕置き、しなきゃね?」

平岡にベルトで腕を拘束され、頭の上へと持っていかれる。

「ちょ、やめろ!」

「ベッドとソファどっちがいい?ああ、よく見えるのはこっちだからソファでいっか」

「………?」

よく見える?平岡が言う意味がわからなかったが、すぐにわかった。

"今日、行ってもいいか"

恭介が来る………

「まじで頼むから……ほんと……やめっ」

「ヤバい木崎くん。色っぽいよー?あ、俺これ誘われてる感じ?」

「ちがっ」

「どっちにしろ頂くわけだけどー」


ガチャガチャと俺のベルトを外す音に血の気が引いた。


「木崎くんの、かわい……やべ、みただけでイきそ……」

「……っ」

なんで全然知らない同士なのに……こいつは俺にこんなに……!

「やめ、ろ」

俺のを口に含み、咥内で犯す平岡。

「ん、……はな、せ!」

「あは、ひもひー?」

「ああっ」

もういやだ、もういやだ!
こいつも俺も、感じてる俺が一番むかつく!

「ふふっ、まだイかせてあげないよ」

「な、」

なんで、と言おうとして口を噤んだ。

「まだ強請ってはくれないか。木崎くんが可愛くおねだりできたら、イかせてあげる」

「だ、れがっ」

「きつくない?コレ」

ツン、とつつく平岡。そんな些細な刺激すら毒で。

「先走り、すごいよ?見て、ちょっと触っただけで………」

「あっ」


一度だけ手で扱く。そしてその手を俺と平岡の顔の間に持ってくる。


「可愛い声………見て、あれだけでどろどろになっちゃった」


そしておもむろにその指を自分の口へと運ぶ。


「なに、して」

「くちゅ………ん、なめ………ぴちゃ、………てんの」

「だから」

「美味しい………ほんと、全部食べちゃいたいなぁ」

「―――っ」

「ああ、俺舐めてんの見て興奮した?エロいなぁ木崎くんは」

「ちが」

「そんな顔してさ、説得力ないよ?………そろそろ後ろ、物足りなくない?」

「!」

「俺の、欲しくない?」

その言葉の意味を理解し、首を横に振る。
「素直じゃないなぁ。ま、最初だしね」
平岡は俺の両足を軽々と自分の肩へとかける。

「お願………やめ………」

無意識に震えてしまう。
悔しいし、カッコ悪いが、それれだけは本当に嫌だ。


「俺が聞きたいのはそんなんじゃないの」

つぷ、と平岡の指が一本入ってきたのがわかった。

「………木崎くん、緩くない?ああ、土日ヤりまくってたもんねぇ。慣らさなくてもいい?」

「い、やだ」

「………聞こえないなぁ」

そう言ったかと思うと、指が抜かれ変わりに熱いものがあてられた。

「入れて欲しい?」

ふるふると首を振る。
そんな気持ちとは裏腹に。

「そ?でもココは物足んなそうだよ」

それでも首を振る。

「………じゃあ、やめる?」

「え?」

「今日会ったばっかの男にしゃぶられて、勃たせて、後ろひくつかせて、どろどろの状態で、あいつに見られたらいいんじゃない?」

「っ」

「さっさと終わらせて、あいつと会えばいいんじゃない?」

「…………」

「ね、どっちがいい?」

「…………」

「入れていい?」


もう、頷くしかなかった。


「…………口で言って?」

「入れて…………」

「欲しいの?」

「欲しい…………」

「…………ちゃんと」

「欲しい、です…………入れて、くださ……」

「あはっ、木崎くんたら、淫らーん」

「アアッ」

「……あっつ、息、吐いて」

「ンッ、アッ、む、りだ……早く、」

「ん、気持ちよく、してあげる」

「あっ、あっ、はっ、あっ」

「もっと欲しい?」

頭が、白く、爆ぜる。

「あっ、もっと、奥!奥、まで、っ」

「くっ、りょー、かい」

もう何回イっただろう。
それでもこいつの動きは止まない。

「ケイ、何回目?変態だなぁ」

「あっ、もっ、むりっ」

途中から、こいつはケイと呼ぶようになった。それが朦朧とする頭で恭介と被ってしまう。

「まだ、だめ、だよ」

「あっ、しつこっ、動、くな」

――――ガチャ。

お互い動きが一瞬止まった。

「ヤバい、恭介来た!どけろ!」

どちらにしろ今からでは何も間に合わないのだが、混乱した頭では正しい答えがわからなかった。そもそももうそこには答えなんてなかったのかもしれないが。
そんな俺を余所に、平岡は腕を拘束していたベルトを外した。

「ひら、」

そして俺にキスをした。
やめろ、と押し返そうと肩に手を置くがびくともしない。

「ケイ、大丈夫か?購買で適当に…………」

( ああ、終わった…… )

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