『キス、して』
ケイがキスをねだるのは初めてだった。俺はキスが好きじゃない。入学式んときにキスした奴が恋人面しやがった。それからうざくなってキスした奴とはもう関わらないことにした。
( でも、ケイなら )
めったに甘えないケイが抱きついて、すり寄って来た。しかも甘ったるい声でねだられたら。もうどうにでもなれ、ですよ。
ケイはセフレの一人。
でも俺から誘うのはケイだけ。
最近はしつこく誘われなきゃ他の奴とは寝ない。その後はなんでかケイが欲しくなるんだ。昨日みたいに。
キスして、とねだった割には口を開かないケイ。微かに開いた隙間からすかさず侵入する。甘い声が、俺を惑わす。
「ね、ケイ。どうして欲しい?」
昨日の仕返しと言わんばかりに、いじわるをする俺。
「恭介………」
「うん」
「抱いて………」
心臓が ドクリと疼いた。
「抱いて欲しい……」
こんな感情 俺は知らない。
「アッ、きょ…すけっ」
「ケイ、な、に」
「ハッ、アアッ、もっと、もっとちょうだ……きょうすけが、アッ」
「っ、」
やけに俺の名前を呼ぶケイ。昨日からどうした。今まで知らなかったケイを一気に見てる気分。
それに、今日はずっと泣きっぱなしだ。最初は生理的な涙かと思えば、ずっと泣いてる。
拭っても拭っても溢れてくる涙。なんで?なにがあったの?なにを考えてるの?
「―――――――アアッ!」
昨日も散々抱いたせいか、一度の射精で気を失うケイ。
ケイ、ケイ。
俺バカだから言ってくれなきゃわかんないよ。
( 俺からケイをとらないで )