「……頼むから……なんかあるたびにここにくんのやめて」

「……だって」

情事後のベッドで、恭介に文句をぶつける。息はまだ整わない。


「俺の身にもなって」

「……お前なんかあったの」

「は?」

「いや、今日はやけに……」

「う、っさい!顔赤くすんな!」

「どこで覚えたの。ちょっとショック」

「もういいじゃん!出てけバカ!宿題すんだよ!恭介のせいでろくにできなかったから!」

「あーもうわかったよ。一回帰るわ」

「一回?」

「いいじゃん、休みだし。んじゃまた夜に来るわ」

「くんな!違う奴とこ行けよ!」

「ははっ、じゃあな」


と、そのまま出て行くのかと思えば、あ、と何かを思い出したように戻ってくる。

「そういえば、今日のケイみたいなの"襲い受け"っていうらしーよ」

「……っ」

今度こそ出て行く恭介。なんなんだよあいつ!ありえねぇ!わざわざそれを言うために……!自分でもなんであんな……あんな……ことしちゃったのかわからないけど……。

とりあえず寝ようかと布団へと潜り込んだ。



「あ、起きた?」

「………?」

「ケイ?まだ寝てんの?」

「んー、なんで?」

「え?」

「もう………夜?」

「まだ1時」

「いちじ………」

「お昼の1時」


むくっと起き上がり恭介の顔を見る。お前早くないか。

「暇だったから来ちゃった」

視線だけで伝わるとか動物並だな、なんて全然働かない頭で考える。

「ケイ腹減ってない?あ、水飲む?」

( 水よりも、ご飯よりも、 )

「ケイ?」

恭介の首に自らの腕を絡め抱きつく。

「……ス、」

「ん?」

「キス、して」

( 恭介が、欲しいんだよ )

「…………」

言ってから気づいた。今発した言葉の意味を、その愚かさを。

「…………なんて」

覚醒した頭で慌てて撤回しようとすると、その前に暖かいものがそれを阻んだ。

「!」

( な、んで )

「ん、んんんっ」

「口、開け」

「っ、」

嫌だ、と言いたい。やめて、と言いたい。でも舌が入ってきてそれを許さない。

「ふ、んぁ」

涙が、零れた。

"俺さー、キス嫌いなんだよね"

"へー、なんで?"

"なんつーか、うざくね?"

"さぁ"

"キスすると恋人面すんのがいてさ"

"自業自得なんじゃ……"

"キスしろって言われたらするけどさ"

"そいつとは絶対もう寝ない"

いつかの言葉を思い出しながら

( 恭介の寝ないは、関わらないって意味だ )

数分前の自分を酷く恨んだ。

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