「……頼むから……なんかあるたびにここにくんのやめて」
「……だって」
情事後のベッドで、恭介に文句をぶつける。息はまだ整わない。
「俺の身にもなって」
「……お前なんかあったの」
「は?」
「いや、今日はやけに……」
「う、っさい!顔赤くすんな!」
「どこで覚えたの。ちょっとショック」
「もういいじゃん!出てけバカ!宿題すんだよ!恭介のせいでろくにできなかったから!」
「あーもうわかったよ。一回帰るわ」
「一回?」
「いいじゃん、休みだし。んじゃまた夜に来るわ」
「くんな!違う奴とこ行けよ!」
「ははっ、じゃあな」
と、そのまま出て行くのかと思えば、あ、と何かを思い出したように戻ってくる。
「そういえば、今日のケイみたいなの"襲い受け"っていうらしーよ」
「……っ」
今度こそ出て行く恭介。なんなんだよあいつ!ありえねぇ!わざわざそれを言うために……!自分でもなんであんな……あんな……ことしちゃったのかわからないけど……。
とりあえず寝ようかと布団へと潜り込んだ。
*
「あ、起きた?」
「………?」
「ケイ?まだ寝てんの?」
「んー、なんで?」
「え?」
「もう………夜?」
「まだ1時」
「いちじ………」
「お昼の1時」
むくっと起き上がり恭介の顔を見る。お前早くないか。
「暇だったから来ちゃった」
視線だけで伝わるとか動物並だな、なんて全然働かない頭で考える。
「ケイ腹減ってない?あ、水飲む?」
( 水よりも、ご飯よりも、 )
「ケイ?」
恭介の首に自らの腕を絡め抱きつく。
「……ス、」
「ん?」
「キス、して」
( 恭介が、欲しいんだよ )
「…………」
言ってから気づいた。今発した言葉の意味を、その愚かさを。
「…………なんて」
覚醒した頭で慌てて撤回しようとすると、その前に暖かいものがそれを阻んだ。
「!」
( な、んで )
「ん、んんんっ」
「口、開け」
「っ、」
嫌だ、と言いたい。やめて、と言いたい。でも舌が入ってきてそれを許さない。
「ふ、んぁ」
涙が、零れた。
"俺さー、キス嫌いなんだよね"
"へー、なんで?"
"なんつーか、うざくね?"
"さぁ"
"キスすると恋人面すんのがいてさ"
"自業自得なんじゃ……"
"キスしろって言われたらするけどさ"
"そいつとは絶対もう寝ない"
いつかの言葉を思い出しながら
( 恭介の寝ないは、関わらないって意味だ )
数分前の自分を酷く恨んだ。