「ケイ、」

俺の腕の中で規則的な寝息をたてて眠る温もりを確かめるように、力を込める。

「ケイ、ケイ……」

ケイが、泣きながら俺の名前を呼ぶ声が愛しかった。

「ケイ、ごめんな………」

早く起きて、言いたいことがたくさんあるんだ。

「ん………」

ぼーっとする。
視界がぼやける。

「ケイ、起きたか」

「え、恭介…なんで…」

よく見るとここは恭介の部屋だった。そして、先ほどの出来事を思い出す。

「あ、俺……、俺……っ」

「大丈夫だから、な」

恭介は優しい手つきで俺の頭を撫でる。

でも、違う。
違う、怖かったんじゃない。
そうじゃないんだ。
今、俺を襲ってるのは恐怖を上回る感情。
( 恭介に、みられた )

「いやだ、離せ恭介っ」

「ケイ、落ち着け!」

部屋を出ようとした俺の腕を素早く掴み、抑えつける恭介。

「頼むからっ、俺は、」

俺はもう、恭介だけの体じゃないんだ。

「うっ、」

涙が溢れた。
壮一を受け入れた。あいつらにイかされた。

そのことがショックなんじゃない。
ただ、恭介に軽蔑されることが怖い。
恭介だけの体じゃなくなったのに、触れられる資格なんて。

「ケイ……お願い、顔上げて」

おずおずと顔をあげると、恭介の整った顔がそこにあった。

数秒の沈黙。
視線は絡み合ったまま。

そして、ぎゅう、と俺を痛いくらいに抱きしめてくる。

「ケイ、ごめん、俺まじ最低」

「恭介………なんで恭介が謝んだよ」

「ケイお願い。どこにも行かないで」

「………………」

「俺、ケイがいないと死んじゃう」

「だって俺、壮一と、」

「そんなん言ったら俺だっていっぱいいろんな奴と寝た」

「……………」

「でも、もうケイだけだから」

「だって、俺たちもう」

「ごめん、本当にごめん。俺がバカでガキだった。俺のせいであんな奴らにケイが触られた」


「恭介……………」

「ケイ、ずっと、そばに居てください」

今度は俺が痛いくらいに抱きつく番だった。

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