なんで、抵抗しないの。
怖くて、震えてるじゃん。
俺に「助けて」って言えばいいじゃん。
なんで受け入れてるの。
俺は、俺がおかしいのはわかってるんだ。でも止められないんだ。
ケイのことになるとおかしくなる。
俺の中の違う奴が、俺を。
「あっ、ンっ、ふ、うあ」
ケイが、俺のじゃない指を銜えている。今にも嫉妬で狂いそうだ。でも俺の手じゃケイからあいつは消せない。やり方が間違っていても、俺は、ケイを俺のものにしたい。
「いや、ふっ、うンっ」
それは、なんとも卑猥で、淫靡で、俺の中のあらぬ欲を掻き立てる。
ただの教室の一角が、切り取られた芸術のように。
ケイは、美しい。
こんなケイを今までずっと独り占めしていたあいつを憎らしく思う。ケイを忘れてくれて好都合だが、こんな美しいケイを忘れるなんて、と腹立たしい気持ちもあるのも確かで。
「そろそろいーんじゃね?」
「だなー」
「誰からいく?」「………どうする?」
「じゃんけんか」
「そうだな」
くだらない言い合いをしているの聞きながらケイの様子を窺う。その光景も物足りなさげに、恍惚とした表情で見ているケイの姿に釘付けになった。
( ケイ、ケイが乱れる姿が早くみたい……… )
―――――――ガラッ
男たちがくだらない小競り合いをしていると、突然扉が開いた。
俺も、男たちも、ケイも、扉の方へと顔を向ける。
「なにしてんの、これ」
そこには、真山恭介が立っていた。