教室に入ると、今度は遊戯君達が出迎えてくれた。ババッと、教室の入り口で群がられてえ、と小さな声を漏らした。
「紫乃ちゃん!漠良君!」
「もう大丈夫なのか?」
「うん。皆のお陰だよ」
「(何が、大丈夫…?)」
ふわり、と皆に笑顔を浮かべる漠良君。だけど、私には全く話が理解出来ない。多分、頭にハテナマークを沢山浮かべているだろう。
困り果て戸惑っていると、城之内君と目が合った。目で一体、何の事だと訴えてみた。
「紫乃、お前も大丈夫か?昨日あの後、いきなり倒れたし」
「え、倒れた?」
『………』
「……私が?」
聞き返して、数秒の間が空いた。空気や、話の流れ的にどうやら、私は昨日倒れたらしい。
恐る恐る言うと、皆の顔に驚きの表情が浮かんだ。そんな馬鹿な。私は貧血で倒れた事もないよ。
「お前、本っっ当に大丈夫か!?」城之内君と本田君の手が額や、頬にべたべたと、触れて、熱があるかとか、脈を調べられたりと、心配された。
体にどこも、異常がないと、分かって離れてもらえると、私は静かに切り出した。
「……あの、実はさ、昨日の事がよく思い出せないんだ」
気が付いたら、自分の部屋にいて。何があったのか…教えてもらえないかな?
「昨日…漠良君の家で『モンスター・ワールド』て盤ゲームやったのは覚えてる?」
「始める前の事は覚えてるんだけど、それからが」
思い出そうとしても、そこまでしか、思い出せない。
遊戯君の問に答えてから、自分の頭を押さえた。こんな事ってあるのか。
「じゃあ、もう一人の僕に会った事も?」
「…もう一人の、遊戯君……?」
オウム返しに繰り返した。遊戯君って双子?一瞬、馬鹿な事を考えてしまった。
「俺だぜ」
ドン!本当にそういう効果音と共に遊戯君の表情が鋭い物に変わった。
「の、ぎゃあぁあッ!?」
遊戯君の顔つきが…!?
可愛らしい顔が鋭く凛としたモノへと変わった。雰囲気も全く違う。こんな遊戯君を私は知らない。
憑依っ!?変身!?悪霊退散!?と驚いた。間抜けな悲鳴を上げて、後退り、壁に思いっきり、頭をぶつけた。
いてぇ!あれ、そういえば、一昨日も似た様な事やったな!
「そ、そんなに驚かなくても…。やっぱり、覚えてないのか……」
そう彼は残念そうに肩を落とした。
「あ、ごめん…!じゃあ、改めて紫乃です」
今の私の態度は失礼だった。
あまりの落胆ぶりと、自分の態度の悪さを反省して、改めて、自己紹介をした。
「! もう一人の遊戯だ。敬語はいらないぜ!」
パァァアアア!と彼の表情が晴れた。
今もよく分からないが彼はもう一人の遊戯君らしい。
「うん!よろしく」
握手をしながら、お互い笑い合った。あ、もう一人の遊戯君も笑ったら可愛い。
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