Black valkria




『罰ゲームッ!!』


誰かがそう叫ぶ声が聞こえた。その声はいつまでも、頭の中で響き、記憶に白い霧を掛けていく。
つい最近の出来事でさえ、おぼろげになっていく。記憶が白く淡く静かに…溶けて消えていく。





あの声を私は聞いた事がある。ずっと昔に、とても、最近に。
それは……誰だったかな。それさえも、今は思い出せない。










「………あ、れ…」


薄っすらと、見える天井が数日前からの自分の部屋になったものだと、気づくのにはそう時間は掛からなかった。
瞳を瞬かせ、目が慣れるとゆっくりと、起き上がった。間違いなくここは自分の部屋のベッドの上だった。
私、寝てたっけ。いつの間にベッドに…?確か、漠良君の家で皆とモンスター・ワールドをしてたはずだ。
それがどうして自分の部屋で寝ているんだ。壁掛け時計で時刻を確認すると、只今、二十二時二十一分。


「夢…、夢なのかな」


寝起きは思考がおかしいからな。
暫く悩んでいたが記憶が曖昧なのでとりあえずは寝る事にした。










-次の日-
未だに昨日の出来事が思い出せない。朝食をそこそに食べて、家を出た。
すると、玄関を開けてすぐに目の前に何故か、漠良君が笑顔でお出迎えしてくれていた。


「おはよう。紫乃さん」


「おは……おはよう、ございます?」


え、あ、れ?
漠良君、どうして、私の事名前で読んでるんだろう。昨日は普通に苗字だったのに。
名前を呼び合う程打ち解けた覚えはないんだけどなぁ…。


「どうかしたの」


軽く私が困惑していると漠良君は首を傾げた。ふと、目に入った彼の左手甲には包帯が巻かれていた。
家にお邪魔した時はこんな包帯はなかったはずだ。





「あ、いや…何でもないよ。それよりさ、左手……大丈夫?」


痛そうだな、火傷かな。


「うん、お陰様で」


にっこり、笑う漠良君の笑顔が相変わらず、綺麗で見とれそうになる。
だけど、何の事だかよく分からない。私何かした?何か、あった……?
そのまま漠良と一緒に学校へ行く事になった。


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