Black valkria




≪冒険者よ!旅立つ前に部屋の隅にいる男の話を聞くといい……ゾーク城までの比較的安全な道を教えてくれるハズじゃ!≫


老人のその言葉に皆の視線が、部屋の隅にいる男の後姿に集まった。


「あれ、あの微妙な髪型に見覚えが有る様な、無い様な…」


昨日、思い出すだけでも腸煮えくり返る様な出来事が――。
そんな事を考えている間に城之内君が、その男に声を掛けた。





「おい!」


≪ン…≫


城之内君の声に反応し振り返る人形。その人形の顔を見て、驚いた。
振り向いた人形の顔が……あのイモジャージ教師刈田にそっくりだったのだ!


「体育の刈田にそっくりだぜー」


「ブホゴ…ッ!!」


城之内君と本田君が爆笑した。勿論、私もむせ返りながら噴出した。
昨日、刈田に嫌がらせを受けた腹いせに漠良君が刈田そっくりの人形を用意したのか…ナイスな仕返しだ!ちょっとすっきり。





≪お…お前等!城之内、本田に……鏡野ッ!!≫


「! おい、今俺の名前呼んだ?」


「いや!お前だろ?」


「凄い、声まであの刈田にそっくりだ」


でも、何か…妙な引っかかりを感じるのは気の所為か?妙に胸騒ぎもする。
私の嫌な予感や、胸騒ぎはよく当たってしまうのでこれから、何か起こるのではないかと、少し心配になった。





≪お前等助けてくれ!俺は奴に…人形にされちまったんだー!!≫


「アレ、今この人形が喋った?」


助けを請う人形に杏子ちゃんが反応した。私にははっきりと、助けてくれ、そう聞こえた。
だけど、皆にはよく聞こえていない様だ。やっぱり、私の空耳なのか。


≪ヒッ……≫


急に人形が何かに怯え始めた。人形は冒険者達に背を向け、ビクビクしながら、言った。


≪ぞ、ゾークの城はこの村を出て北に行った所だ……だが、森は通らない方がいいぞ…モンスターがウヨウヨしてるからな……≫


「おう!ありがとよ!」





「(奴って……誰?)」





それに今の殺気はどこから。
冒険者パーティはゾーク城に向かい駒を進める。










「そろそろ、モンスターの出現するエリアに入った…これからはターン毎にモンスターの出現判定を行うよ!」


この10面ダイスを使ってね!
獏良君は昨日、私とのゲームで使用した白の10面ダイスと赤の10面ダイスを取り出した。


「今君達の居るエリアはモンスター出現率は30%。判定は2個の10面ダイスを振って行う」





「白いダイスを1の位、赤いダイスを10の位とする…その結果、31〜99の数字が出た場合はモンスターを回避した事になる訳さ。
ではダイスを振るよ。判定ロールの目は21!30%より、低い目が出た……よって、モンスターが現れた事になる!!」


漠良君の手か、ら滑り落ちたダイスは…赤いダイスが2で白いダイスが1の目を出た。
今まで何も無かったフィールドにモンスターが出現した。待ってましたと、城之内君が声を上げた。


「ハハハ!出やがったなモンスターめ!バトルが無かったんで退屈してたとこだぜ!」





「バトルは全て、この10面ダイスを使って行う。パーセンテージロールでね!さぁ、君達が先制だ」


ゲーム・マスターは冒険者達にダイスを渡した。





「おーし!戦士の俺から、サイコロを振るぜ!」


先攻は城之内君。ダイスの目は――13。


「戦士のレベル・すばやさ、武器技能値をデータ算出した結果 戦士のショートソードのゴブリンへの命中率は40%!OK命中だ!」


早口で言って漠良君はパソコンに数値を打ち込んだ。
よくあんな早口と同時に打ち込み出来るな、と私は漠良君に感心しっ放しだ。





「攻撃は00に近い程敵にダメージを与えるんだ」


「おっしゃあ――!」


三日月を描く様な城之内君の攻撃を受け、モンスターは倒れた。最初の敵のレベルは低く難なく倒す事が出来た。
ストーリーが進むにつれて、モンスターのレベルが上がっていくんだって。





「でも、その逆ファンブル(大失敗)の目である99を出したら罰を受けてもらうよ……」


ゲームの世界の永遠の住人となる罰をね、ククク。





「また、パシリ?」


漠良君は人をパシリにするのが好きだね。


『……今回は違うからね』


こいつは、本当に……どうして、パシリしか浮かばねぇんだよ!!?





あんまり私が、笑うものだから、漠良君に黙れと、言わんばかりに睨まれた。





END


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