「考えてみれば、俺達ってこの世界の事よく知らないワケだよな」
「敵の存在も冒険の目的すら、分からねーワケじゃん!」
「じゃあ、まずは情報収集からだね」
とりあえず、この世界の事を少しでも知らないと。
「紫乃の言う通りよ。見て!村よ、村に行って情報を入手するのがRPGのお決まりでしょ!」
私の意見に頷き、杏子ちゃんはフィールド上の村を指差した。
「そうだな!よし、まずあの村に行こう!!」
冒険者達は近くの村に情報収集に向かう事にした。
ゲームマスターの漠良君は頷きながら、ストーリーを読み上げていく。
『OK!君等は5ターン掛けて、村に入った…』
模型の上部を外すと、酒場が現れた。これ、獏良君一人で造ったのかな。
器用だなぁ。こんなの私はじゃ絶対に作れないよ。
「よし!早速、酒場で情報を入手しよーぜ!」
「おい、そこのオヤジ!俺達ゃよー見ての通り、腕は確かな冒険家なんだが、何かいい儲け話はねーか?」
「早速、金絡みかよ……」
「城之内君、もっと爽やかな話し方にしようよ」
これじゃあ、ただのチンピラみたいだよ。
城之内君は酒場のカウンターにいる老人に話し掛けた。本田君が呆れて呟いた。
大体、自分で腕のある奴とか言う人に限ってあんまり…大した事ない事が多いんだよね。
『その言葉に老人は一瞥を投げかけるとタメ息をひとつ吐いて君達に語り始めた……』
漠良君が静かな声でシナリオを読み上げる。
≪金で解決できるものなら、有りったけの金をやるワイ…。じゃが、報酬を受け取る前にお前さん方は屍に姿を変えとるじゃろうがの!≫
「(今、本当に駒が、喋っている様に見えた……これもモンスター・ワールドの特徴なのかな?)」
老人の人形の微かな声の仕草もまるで本物の老人の様に聞こえた。
『そう言うと老人は店の奥に進んで行く…』
「城之内君…全く相手にされてないね」
「ちょっと待てや、オヤジ!」
「じ、城之内君、もう少し冷静になろうよ!」
これゲームなんだしさ!
人形相手にも関わらずに城之内君は一人噛み付く様に叫んだ。
クールダウン、クールダウン!隣にいる私はまあまあと、城之内君を宥めた。
「何やらワケありの様子じゃねーか!話だけでも聞いてやるぜ!!」
『お、その言葉に老人は重たい口を開き語り始めた…』
≪何年か、前まではこの村も平和な日々が続いとった…じゃが、闇の支配者・ゾークが現れ、国王を暗殺し、城を邪悪な根城に変えてしまったのじゃ≫
≪それからというものこの世界に邪悪なモンスターが現れ始め…多くの村人がその餌食になってしまったのじゃ≫
「何ぃぃぃ!絶対許せねーぜ!よし、オヤジその悪党は俺達が必ずやつっけてやるぜ!!だから、有りったけの金出しな!」
「鬼だ!」
「違うよ本田君、金の亡者だよ」
某ゲームの女○ンズハンターを思い出させるね。(ちょ、ジャンル違うぞ! byバクラ)
「ねぇ、私にはさっきから、この人形が本当に喋ってる様に見えるんだけど…」
「杏子ちゃんも…?私もそう見るよ」
不意に杏子ちゃんが、不気味と呟きながら人形を見た。
仕草とかも、凄い自然の老人の様な感じがすると言うか、でも、これはゲームだ。
冒険をより楽しくする為の機能か何かと言う考えもあるが。
「まさか、TRPGではNPCはマスターが演じる事になってるんだ」
人形が喋る訳ないよと、遊戯君が首を振った。
「じゃあ、あの老人の声は獏良君が……」
「うん、多分…」
自信なさげに頷いた。
「へぇ!獏良君って、声真似上手なんだね」
声優に向いてるんじゃないかな?そう言えばポ○モンの主人公に似てるよね!
『……鏡野君、ちょっと黙ろうね』
あれ、話ずれてねぇ!?おっと……!
鏡野のボケにいちいち反応してたら、日が沈んじまう。ここは無視してさっさとシナリオ進めよ。
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