Black valkria




-放課後-
明日の大会に出場する条件の一つ、デュエルディスクを所有する事。
遊戯君のおじいさんが経営するお店ではデュエルディスクを取り扱ってないので、街のカードショップを訪れた


「あの、デュエルディスクってありますか」


店に足を踏み入れると、カウンターの中で箱から、カードパックを取り出していた店主が振り返った。
ショーケースの中身が異常に少ない。デュエルディスクを買いに来たデュエリストがデッキ強化の為に買い漁ったんだろう。
店主に尋ねると、今日で何人も同じ様な客が来て慣れている店主は私達の顔を見て頷いた。


「君達も明日の大会に出るデュエリストだね!」


今日は明日の大会に出る為にデュエルディスクを買いに来るお客さんでひっきりなしさ!と勝手に語る店主。





「デュエルディスクね。いくつか残っているよ。――ところで、君達の名前を聞かせてくれないかな…」


店主はカウンターの中にある商品棚の中を確認した。見る限りでも、デュエルディスクは後僅か。
もう少し遅かったら、街中のカードショップ駆けずり回ってたところだ…。


「武藤遊戯ですけど…」


「城之内克也だ!」


「…紫乃ちゃん?」


ボケーッとしていたら、遊戯君に制服の袖を引っ張られてる事に気付いた。慌てて「何だっけ?」と、聞き返した。


「…紫乃、今日は随分大人しいな」


まさか、熱でもあんのか?と城之内君に額に手を当てられ熱を測られた。
城之内君の手をやんわりとどけて「それで、何だっけ?」と、再び聞き返す。「名前を言うんだよ」そう、本田君が教えてくれた。
まだ、疑い深い眼差しを向けてくる城之内君をなんとか納得させて、店主に向き直る。


「鏡野紫乃です」





店主はレジの横にあるパソコンに遊戯君の名前を打ち込んで何かを検索し、目的のデータを見つけて、感心する様に大きく頷いた。


「へー凄い文句なしだ!」


一体、何がそんなに凄いのか、分からない当の本人を置いて、凄い凄いと頷く店主に遊戯君は尋ねた。


「実はね、全国のデュエリストのデータが調べられるんだ」


海馬コーポレーションが独自にリサーチして、カード専門店の端末にデータを送ってるんだ。
デッキのバランスや傾向。大会出場記録。レアカードの所有枚数。デュエリストレベル。





「遊戯君のデュエリストレベルは最高の八つ星だよ!」


「え…レベル8?」


「はい!おめでとう。このデュエルディスクは無条件で差し上げますよ!」


差し出されたデュエルディスクを受け取り、いいんですか?と遊戯君は恐る恐る確認した。
「海馬コーポレーションの通達でね」そう、店主は不安そうな表情の遊戯君に大きく頷いた。


「レベル5以上のデュエリストだけにしか、デュエルディスクを所有出来ないらしい。明日の大会規程らしいね!」





「お、俺のレベルはいくつだ…!?」


成る程、そうやってデュエリストを振り分けていたのか。レベル8のデュエリスト…遊戯君ともう一人の遊戯君なら頷ける。
なぁんて、私が暢気に感心していると、城之内君は慌てて、店主に訊ねた。


「え〜と、城之内君は…あった。残念…レベル2だ」


「2!?」


それを聞いた途端に城之内君はハンマーで頭を殴られた様な顔になった。あまりのショックに一瞬背景に雷が落ちた様にも見えた。
我に返るなり、海馬君への怨念を込めながら、喚き散らした。


「畜生ー!海馬の野郎…!」


「城之内君…ほら、よくある何かの間違いかもしれないし!」


あまりの落ち込み振りに慰めの言葉を掛けた。よく打ち込みミスとかあるじゃない。遊戯君も、城之内君を宥めた。


「あ、ごめん。本当だ。よく見たらレベル5だったよ!君は合格だ!」


「え…本当か!」


「おめでとう。デュエルディスク進呈だ!」


「やったぜ!」


城之内君は少年の様に顔を輝かせながら、店主に振り返った。新品のデュエルディスクを抱えた店主が城之内君に愛想笑いを浮かべた。
両手を広げて、城之内君はデュエルディスクを受け取る。喜びが大きすぎて飛び跳ねている。


何だかんだ冷静を装って周囲を見ていたけど、自分の番になるとやっぱり、妙に緊張した。
店主が二人の時と同じ様に私の名前を打ち込み、画面を見つめ驚愕した。





「こ、これは!」





今までとは随分違うリアクションに驚く。まさか、論外のレベル0とか!?どうし……


「驚いた。君女の子だったの?」


まじまじと頭から、つま先まで眺めて店主に言われた。悪気が無いだけに余計たちが悪い。絶句した。多分、今の私にも背景に雷が落ちているに違いない。


「鏡野君のレベルは…6だね。はい、おめでとう!君も無条件でデュエルディスクを進呈だ」


変に驚かせんな!といつもなら、言い返していたかもしれないが今日はそんな余裕も無い。
小さく苦笑いをして、私は店主からデュエルディスクを受け取った。


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