「バトル・シティ!!」
城之内君の興奮に満ちた声が屋上中に響き渡る。その声の大きさにちらほらと、何人か生徒がこちらに振り返る。
が、城之内君の声だと気付くと、すぐに興味を失ってしまう。そんな事を気にせず彼は声のボリュームをそのまま続けた。
「つまり、明日この街でデュエリスト共が派手に闘い合うって訳かよ!」
「うん!かなりの強豪が揃ってるよ」
「海馬の野郎!童実野高校NO.2のデュエリストの俺に教えねぇとは…許さねぇ」
未だ興奮の覚めない城之内君はぎりぎりと拳を握り、バトル・シティ主催者の海馬君を怨んだ。
バトル・シティの情報はネットや口コミだから、城之内君が知らなくて当然だ。
私も、遊戯君も、あの日、あの時刻に童実野美術館を訪れていたから、バトル・シティの事を知ったのだ。
偶然と言うにはあまりにもタイミングが良過ぎる。何かに…導かれたとしか、言い様がない。
「え、お前がNO.2だったのか?俺はてっきり、紫乃か、海馬だと」
「私も」
「僕も」
「お前等…ッ」
声を揃える本田君、杏子ちゃん、漠良君の三人に城之内君は更に拳を震わせた。
「だって、ねぇ」と、彼等に視線を向けられた私は苦笑いをした。
「遊戯と紫乃も参加すんだろ」
「勿論だよ」
「…うん、まぁ」
すぐに頷く遊戯君。それに対し私は俯き、曖昧に小さく頷いた。考える事が沢山ある。
バトル・シティ…神のカードと王――もう一人の遊戯君の記憶を巡るものだとか。
陸の事も、思考が全くまとまらない。ため息になってしまいそうな息をゆっくり、吐き出した。
何か言いた気に向けられた遊戯君の眼差しに私は気付かなかった。
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