Black valkria




学校に着くと、新しいクラス割のプリントが張り出されている掲示板へと向かった
掲示板前に群がる生徒達を押し退けなくても、良く見える。こういう時だけ、自分の身長のありがたさを知る。でも、大体、後になって悲しくなる事の方がずっと、多い。
ドギマギしながら、自分の名前を探す。勿論、遊戯君や城之内君達の名前も。また同じクラスになってるのかな。


なんと!誰一人欠ける事無く、同じクラスにまとまっていた!誰かが手を回したのではないかと、言うくらい上手くまとまっていた。





「おはよ」


ホッと、息を付きながら、教室のナンバープレートを確認して、ドアを開けた(うっかり、一年の教室に行こうとしてしまった)。
教室に入って、すぐに真ん中に人だかりが出来ていた。その中に遊戯君達の姿を見つけた。


「紫乃!」


しかし、そこにいたのはいつもの遊戯君ではなく、もう一人の遊戯君が表に出ていた。
たまに授業中に入れ替わっていたみたいだがこんなに早く出ているのは珍しい。


「どうしたの皆…?それに朝から、もう一人の遊戯君が出てるなんて珍しいね」


妙に空気がぴりぴりしてるって言うか、鋭い殺気が私を挟んで飛び交っている様な気がする。
遊戯君達の鋭い視線の先の人物と目が合った。見ない顔の男子生徒でサイコロのピアスをしている。
あぁ、ピアスいいな。ピアスホール開けたいけど痛いのは嫌だし。





「御伽、御伽龍児だよ。はじめまして?」


ぼんやり、男子生徒を観察していると、彼から人当たりの良い笑みを浮かべて、握手の手を差し出してきた。


「あ、うん…はじめまして、鏡野紫乃です」


差し出されたその手を握ろうと出した手を横から、伸びた城之内君の手が掠め取った。…何で城之内君と握手してるんだ?


「気を付けろ。紫乃!こいつとんでもねぇー奴だぜ」


「おいおい、何も知らない鏡野君に変な事を吹き込まないでくれるかな」


私が「何か、あったの」そう聞くと、城之内君より、先に御伽君が答えた。


「別に何も、それより鏡野君。君…ゲームは好きかい」


「好きだけど」


だったら、何だろう。机の上に散らばっているトランプは今まで遊戯君達と、そのゲームでもしていたのだろうか。
ババ抜き?大富豪?いや、それにしたらカードの枚数が少な過ぎる。何してたんだろう、気になるな。


「御伽!!しつこいぞ、お前!今度は紫乃を使って、俺達の友情を壊す気か!」


もう一人の遊戯君と城之内君が御伽君から、私を庇う様に前に出た。
何故、庇われているのか、分からない私は目を点にして、三人を見た。


「そんなんじゃないよ、ただ純粋に鏡野君と仲良くなりたいだけさ!」


「白々しい!笑わせるぜ!!」


さっき、城之内君に酷い事したくせに!!


「じゃあ、好きなだけ、笑ってるといいよ!さぁ!ほら、笑えよ!!」


あんな簡単なのに引っかかる奴が悪いんだよ!!
言い争いに巻き込まれたくないので私は杏子ちゃん、漠良君、本田君と一緒にそっと、その場を離れた。





昼休み。屋上でお馴染みの面子で昼食を食べていると、城之内君が御伽君から、受けた屈辱を語ってくれた。
一部大げさな脚色だと、杏子ちゃんが教えてくれた。


「D・D・D?」


おかずの唐揚げを飲み込んで、聞き覚えのない単語に聞き返した。


「そう!明日そのゲームの発売日なんだ」


遊戯君の話によると、明日オープンする店のオリジナルゲームらしい。
しかも、場所は遊戯君のおじいさんの経営するゲームショップの通り向かい。
おじいさん営業し辛いだろうな。一緒に買いに行かないかと、誘われた。


「新しいゲームか…うん!気になるし、行くよ」


新しいゲームの話で盛り上がる遊戯君達を見ていたら、自然と憂鬱気味の心が少し晴れた。
それに新しいゲームの事も気になり出した。ごめん、おじいさん!心の中で遊戯君のおじいさんに頭を下げた。


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