-翌日-
玄関を出ると、すぐに漠良君と出くわした。待ち合わせ十分前くらいに着く様に出たのは彼も一緒みたい。
一緒にブラッククラウンに行くと、もの凄い行列に遭遇した。軽く瞬きを繰り返して、誰かもう来ていないか、探した。
すぐに杏子ちゃんと遊戯君を見つけた。
「城之内君、遅いなー開店まで後、三十分しかないのに…」
先程から、遊戯君は何度も何度も腕時計を確認して、城之内君の姿を探している。
「アハハ、寝坊でもしたんじゃないかな、城之内君」
「おーい!」
私が言い終わって、すぐに手を振りながら、こちらに向かって、来る城之内君を見つけた。もう少し時間にルーズなとこ直して欲しいな。
その後すぐに遊戯君のおじいさんも合流(と、言うのか?)して、開店時間まで他愛のない事会話で時間を潰した。
案外時間は早く流れた。時計の針が十一時を指すと、
「ブラッククラウン開店!」
店の扉が開き、店内に流れ込む人だかり。
「うわぁああ!」
「ゆ、遊戯君!!」
ぎゅうぎゅうと、流れに押されて、入店すると早速人波に流されそうな遊戯君は何だか、人に挟まれて体が浮いている…。
沖に流されそうな勢いだったので遊戯君の細い腕を掴んだ。結局、皆人波に呑まれ、私と遊戯以外バラバラになってしまった。
「あ、ありがとう…紫乃ちゃん」
「いや、それにしても、凄い人だね」
いつの間にか遊戯君を抱っこしている様な状態になっていた。小さい遊戯君はこの人波で押し潰されてしまいそうだったから。
男の子なら、抱えられるのは嫌だと、思うが(嫌だと言われれば降ろすけど…)遊戯君はあんまり気にしていないみたい。
だけど、人がどんどん増えてもう、床に降ろしてあげられるスペースが無い。
「これじゃあ、いつ買えるか分からないね…」
「城之内君達は買えたかな」
そう呟くと、の店のマスコット的存在のピエロが何故か、こちらにやって来た。
ピエロはブラッククラウンのマスコットだけど、非常に可愛くない。
「ピエロ…?」
「え、僕達?」
ピエロは人波を分けて、私の腕を引きレジのすぐ近くまで連れて行くと、そのまま店の奥に引っ込んでいった。
「前の方まで連れて来てもらったね」
「うん、ラッキー…なのかな?」
でも、さっきのピエロ…薄気味悪かったな。あの仮面から覗く濁った目…正直、ぞっとした。
「お客様」
「あ、はい。何か」
もうすぐレジ前と言う時に二人組みの警備員に声を掛けられた。呼び止められる様な事はしてないので少々戸惑った。
「恐れ入りますがそちらのお客様。奥の部屋へ着て頂けますか」
そちらって…どちらだよと、一瞬考えたが警備員の視線は真っ直ぐ遊戯君に向かっていた。
えぇ、遊戯君が一体何をしたって、言うんだよ。
「何の用件ですか」
尋ねても、警備員は答え様ともしないで遊戯君の腕を捕らえた。
「え…!ちょっと、えぇ!?紫乃ちゃん!」
警備員に強引に引っ張られて、遊戯君にしがみ付かれる。私も遊戯君を渡すまいと、彼の服をぎゅっと掴んだ。
だけど、狭いし大の大人二人掛かりで私と遊戯君は引き剥がされてしまった。
「離せってば!!」
そのまま引き摺られる様に遊戯君は店の奥へと、連れて行かれた。
「遊戯君!!くそ…っ」
手を伸ばしても、もう届かない距離だ。すぐ後を追おうとしたが人波に阻まれてしまった。
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