「さすが……流石です。Mr.ペガサスから、要注意人物と言われた人。僕の負けです」
勝負が付き、デュエル・リングから降りて来たキール君はデュエル前の穏やかな方の表情に戻っていた。
「え。要注意人物って…え、私が?」
私何もしてないよっ!?
「はい。Mr.ペガサスはプレイディングはまずまずの中級デュエリストなのに土壇場の引きの良さは異常だと…」
「それって誉められてるのかな」
あの野郎…そんな事言ったのか!どうせ、中途半端な中級デュエリストだよ!文句あるか!!
…と盛大に喚き散らしたいが、馬鹿馬鹿しいと自分に言い聞かせてぐっと堪えた。
「さっき、初めて紫乃さんと会った時、「うわぁ、この人弱そ!」と思った事を今訂正します。カモろうとして、ごめんなさい」
「ねぇってば、話聞けって」
「負けはしましたが、いいデュエルでした〜」
人の話を一切聞かないで自分の話を続けるキール君にいい加減、突っ込むのが疲れてきた。
もう、受け流そう。大自然を流るる川の如くに。うわぁ、私って心広い。
「これが賭けのスターチップです〜」
はい、と2個のスターチップを手渡された。しっかりとそれを受け取って握り締めた。
これでまた少し、ペガサスの城に近づいた。ペガサス城まで後3個だ。
「紫乃さんのスターチップはこれで7個ですね!後3個でMr.ペガサスの城に行けますよ」
頑張ってください!僕紫乃さんを応援しに行きますから〜!
ピンク色のオーラを撒き散らしながら、彼は言った。本当に男の子なんだろうか。
実は女の子ですって後から言わないよね?言わないよね?
「あ、ありがとう。でも、いいの?ペガサスに雇われてるのに挑戦者を応援して」
「いいんだよ。オレあのカーテンヘアー野郎、嫌いだし」
何つーか?心を見透かされてるみたいで。
急にデュエル時の表情に戻り、喉の奥で笑ったと思ったら、キール君は心底不機嫌そうな顔をした。
≪「確かに君の言い分は分かる・わ」≫
「じゃあ、僕はこれで失礼します〜」
「あ、うん」
「じゃあ、Mr.ペガサスの城でまた会いましょうね!もし紫乃さんがいなかったら…と言うか、オレに勝っといて失格になったりしたら、首にりぼん掛けてオレのぬいぐるみにしてやっからな」
キール君のにっこり笑顔が絶対零度の極悪笑みに変わり、体がびくりと震えた。
彼のぬいぐるみになると言う事はバラされると言う事だ…!
彼なりの激励だと受け止めておく事にしよう。
「ぜ、善処させていただきます」
「それじゃ、また城で」
そう言ってキール君は闇夜に隠れて姿を消した。
≪…ペガサスは随分変な子を雇ったのね≫
「うん、そこは否定できない」
でも、多分…悪い子じゃないと思うんだけど…。
← | →