「フフ…やぁっと、見つけたぁん」
薄暗い森の中に自分の嬉々とした声が静かに響く。
小さな手鏡に映る人物をそっと一撫でし、込み上げる感情を抑えきれずに小さく笑い声を上げる。
「あら、あらら?おかしいわぁん…前よりも、もっと、ずっと、闇の反応が弱いわぁん」
おかしいわぁん。闇の種子が育ち始めている頃だと思っていたのに…。
闇の力は育っているどころか、寧ろ消え掛けているじゃぁないのん。
鏡越しにへらへら笑っている人物は心に闇を多少は孕んでいるものの、まだ足りない。まだまだ足りない。
だから、私に気がつかないのかしらぁ、折角、こんな所まで会いにきたっていうのに…酷いわぁん。
「これじゃあ、駄目ねぇ。全然駄目ねぇ…仕方ないわねぇ」
私が闇を植えつけなくっちゃぁ……ふかーい、ふかーい闇を。
"彼女"に目覚めてもらう為に――。
「フフフ、フフフ…アハハ、待っていてねぇ」
今、行くわぁん。
END
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