「いつも通り、飛び出してきちゃったけど、
今日開校記念日だった…」
学校の正門前でその事を思い出すなんて、馬鹿、私馬鹿!
道理で登校している生徒が誰もいないなと思った訳だよ。グラウンドで部活動に励む生徒等がちらほらといるくらいだ。
今から、マンションに戻っても、お姉さんはきっと、まだいる。あの事について根掘り葉掘り聞かれたら、私脳みそ爆発する。
「あれ、紫乃じゃねぇか」
よし、どこかで少し時間を潰してから戻ろう。
そう、一歩踏み出そうとした瞬間、馴染み深い声が私を呼び止める。
振り向くと、学校側から、制服姿の城之内君が手を振って駆け寄ってきた。
「城之内君」
彼も今日が開校記念日だと、忘れて学校に来てしまった仲間だろうか。
「お前、」
制服姿の私を見て、城之内君がそうかそうかと頷き笑う。
「お前も昨日の数学の宿題を忘れて今日再提出しに来た「違うよ」
違った様だ。
「ま、まぁ、そうだよな。お前は宿題とか課題とか忘れずにちゃんと、やってくる奴だし」
「今日が開校記念日だって忘れてたんだよ。自分の間抜けさに涙が出てくる」
「へぇ、お前が珍しいな……あ!そうだ」
急に何かを閃いた様に城之内君が私の肩をがっしと抱いて歩き出す。
え、あの私をしっかりホールドして、どこに向ってるんですか、城之内君。
「これから、カードショップ行かねぇーか。ほら、新しく街ん中に出来た」
「あーあのビルの中に出来たっていうあそこ?」
どうせ暇だ。
あまり深く考えずに頷くと、城之内君は私をホールドする手を緩め、「それじゃ行こうぜ」と、歩き出した。
「平日だってのに結構込んでるね」
雑居ビルの最上階に出来たと言うカードショップは混雑していた。いて!足踏まれた。
人ごみに揉まれながら、城之内君はきょろきょろと辺りを見回す。
「まぁ、オープンセールとかで、色々イベントやってるらしいからな…お、いたいた。おーい!」
急に大声を出して、城之内君はどこかの誰かに向かって手を振り出す。
誰か知り合いがいるのだろうか。人ごみの中に目を凝らすと、
「城之内君遅いよ。ここ凄い込んでて……あれ、紫乃ちゃん?」
驚きとその他の何かに胸を打ち抜かれる。な、なんで、遊戯君が…!
遊戯君は目を真ん丸にして私を見つめて、私はと言うとその眼差しに耐え切れず、化石化してしまう。
「紫乃も暇だって言うから、連れて来たぜ。なぁ、紫乃」
「は、はは…うん」
城之内君の友達思いの爽やかな笑顔と心遣いがこれ程憎らしく思った事は今までない。
うわ、うわ!遊戯君!どうしよ…って、こんなに慌てる必要は無いじゃないか。
あれは罰ゲームって事で自己解決したじゃないか。私は何をここまで気まずく思う必要があるんだろう。
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