ネタ

魔王が勇者

!仮に主人公は女性で文章が書かれています。


 目の前に並ぶ文字を見て、私は奇声を発した。手が震えるせいで、上級紙に皺が寄る。
「なによこれ…」
 ふと視界の隅に白が映った。そうだ、そういやまだ書類残ってた。山が3つ、正面の扉が見えないほど。そして、机の上に持ってきていた書類の文字も同時に目に入る。
「……もういい」
 先程受け取った手紙を裏返し、ペンを取り出す。さらさらといくつか書いたあと、別の紙に筆を置いた。
『最愛の弟へ
 おねえちゃんは、休職します。ごめんね。
 アリア』
 大丈夫、二、三日現実逃避するだけだから。心の中で付け加えて、展開した魔法陣に触れた。

 これが、長い旅の始まりになるなんて思いもしなかったけど。


→→→


 突然変わった景色に、私はついていけなかった。自分の間抜けな声と、それをかき消すような歓声と戸惑いが聞こえる。
 草原でドラゴンと戯れていたはずが、石造りの壁が四方を覆い、天井には見たことのない神様っぽいやつが描かれていた。寝転がっているのも、ちくちくふわふわな草じゃなくてざりざりごつごつな石で出来た場所。そして、一体どこから出てきたのか、ずらっと並んだ人間たちが、色とりどりの服を着て、同じように怪訝そうな顔でこっちさを見てくる。
「この方が…勇者…」
 呆然と呟くのは、その中で一番派手な格好をして、派手な顔の男。
 いつまでも寝転がっているわけにもいかず、私は起き上がった。おお、とどよめきがあがる。動物園にいるパンダの気分だ。
「勇者様だ…」
「あの方が、勇者…」
「まだ子供だぞ」
「しかし伝説通りの黒髪だ」
 ちらちらこっちを見ながら話す彼ら。やるなら私の見えないところでやってくれないかな。
 しかし、さっきからやたら変な単語が混じってる。えーと、ユウシャ? ユウシャって、勇者?
「はじめまして、勇者さま。ようこそいらっしゃいました」

 まっさかーと思ってたら、全員揃って右手の拳を胸に置いて頭を下げる。明らかに私に向かって。



 え、私、魔王なんですけど。



 紫紺の目、長い黒髪、魔法で隠してるけど羊のような角、不健康そうな肌。ゴシックパンクを主体とした服装。人間で言えば17歳程度の外見だけど、実年齢は263歳。スペックは、すべてを焼き尽くす黒い炎と光属性以外の全属性魔法。武器は、お母様から頂いた大鎌。
 政務の中で人間を殺したのは、数えきれず。国だって滅ぼしたことあるし、ドラゴンと全面戦争を起こしたことだってある。あと、城まで来た勇者を鼻で笑って一方的に引き裂いたりもした。
 在位、163年とちょっと。
 そんな私が勇者ですと。

「勇者さま、混乱する気持ちはよく分かります。ですが、話を聞いてください。今、こ…」
「はい、質問。なんで私が勇者ですか」
「え、いや、あの…」
「勇者『さま』の言葉は、最優先だよね?」

 なんかやたら長い説明が始まりそうだから、ぶったぎって私が質問して答えてもらうことにした。
 曰わく。

 ここは、私がいた世界とは別世界で、魔王が大暴れしてウザいけどそいつに匹敵する力の持ち主がいないから退治してくれる異界の勇者を呼び出そうと女神さまの魔法陣を使ったら、私が出てきた。以前にも勇者はいたらしく、伝説通りに私も黒髪に不思議な色合いの目だったので、さっそく勇者認定。魔王退治してくれと言われている。今ここ。

「なんで、勝手に連れてこられた私がやらなきゃいけないの。聞いた話だと魔王に勝てなさそうだし、さっさと帰して」

 面倒だから要求をはねつけた。ていうか、政務放棄から二日経ってる。絶対に帰らないと、民に悪い。あの手紙のショックを癒やすために思わずしちゃった家出紛いが出来たのは、ある程度はやっといたからだ。まぁ、問題が多いからもって二日なんだけど。それに、部下が迎えにくる。あの冷笑で。それは避けたい。なんとしても避けないと。だからこそ。
 視線をやれば彼らは一様に体を縮めて、代表格の男のみが一歩進み出た。

「……申し訳ないのですが、お帰りいただけるか分かりません」
「はい…?」
「前例がないのです。こちらの物を異世界へ移したという記録はありませんし、そも空間を転移する魔法などございません。勇者召喚陣も、女神さまが下賜されたものでして、構造がわかっていませんのでなんとも…」

 なにそれ。
 後で城下町を回って気付いたけど、本当に魔法が発達してない。代わりに機械というものがいくらかあったものの、扱いが面倒らしく城内でしか見かけなかった。
 結論、帰れません。
 ちょ、ちょっと! 私、向こうに家族いるし、仕事あるから帰らないといけないんだけど! あいつが怖いんだけど!

「あっ、前の勇者はどうなったの!?」

 一縷の望みをかけて聞いてみる。

「勇者さまですが…魔王を退治なさった後、女神の光に包まれたとしか記述がなく…」

 希望的観測で帰ったと解釈できるけど、微妙だな! 神官は神様の意志を聞き取れないんですかこのやろう。




とか、そういう話です。魔王様だったらレベルカンストなので、いろいろ役に立つに違いない。話の内容としては、よくある感じです。(小説家になろうとか、そのあたり)書くとしたら、少し内容を変えて書きます。

主人公
魔王。だけど、今は勇者。魔族なのにほぼ人間の見た目。大鎌装備の珍しい勇者さまとして恐れられる予定。

アイツ
宰相。苦労人の怖い人。上司の奔放ぶりに振り回される。


現在魔王代理。主人公のだいぶ年下。無表情で無口。でも有能。姉上さえいればいい。

派手な男
王子。勇者さまを召喚しようとしたら魔王呼んじゃった人。レベルカンストの主人公が好きなもののへタレで何も言い出せない。
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