If

きらきらひらひら

 もしも、あのとき。
 別の選択をしていたら。
 そんなことを考えたことはありませんか。


 ***

 今日も普通に過ぎていく時間。学校、バイト、遊ぶ、寝る。日常的に繰り返される。僕は、元来、あまり外に出ないタイプだ。だから、今日みたいなことは非常に珍しい。
 あまりにも天気がぼんやりとしていたから、それにつられて僕の意識も朦朧としていたのかもしれない。それくらい珍しいことだった。

「こんなところに、ゴミの山だなんて」

 薄い雲が太陽を隠し、でも弱々しい光が地上に届いて、粗大ゴミたちが埃をかぶり土にまみれながら鎮座していた。いや、眠ってるのか。気がつけば、僕は粗大ゴミが放置された場所に立っていた。この街の汚物を処理する、または押し込める場所。
 僕は、ふと見回してきらりと反射する光を見つけた。近づいて手にとってみれば、綺麗な色が混ざった石。その中の何かが反射したのか、日にすかせばきらりきらりと光が舞う。

「おい」
 きらきらひらひら
「おいっ!」

 ぴたり、と手をとめる。聞こえてきた低めでドスの利いた声が、満足そうにそれでいいと言った。
 気付かなかった。人がいたのか。どうやら目に光が入る位置だったらしい。

「ごめんなさい、いるとは思わなくて」

 素直に謝れば、気にするなと返ってくる。怒りは鎮まったのか、優しく甘いような声音になっていた。

 ああ、素敵な声だな。

 僕は、そのまま石を持って帰路についた。




(I was inconsiderate.)
(The voice is ...)
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