流れてくる記憶


ズキンッ



頭痛で目が覚めた

「…最悪。」


時計に手をのばすと時刻は8時をまわっていた


眠たい目を擦りシャワーを浴びるためバスルームに向かう






決して長くない髪から滴が落ちる



「っ!」


鏡に写し出された自分から目を背ける

「まだ、平気…まだ…」

何度も何度も自分に言い聞かせると胸にサラシを巻いた


「そろそろ会いにいかなきゃね。」


今日こそはきちんと挨拶をしようと思いエレベーターに乗り込んだ









白鬼院家

古くから栄え続いている名家

世話係がいて沢山のお手伝いさんがいる

それが僕の家で

そして学校ではさんざんにいじめられた



ただ僕は


僕は



淋しかった

自分の取るに足らなさが

白鬼院という名前だけでいじめられる事も大人に守ってもらう事も

その大人さえも僕自身ではなく家を見ている事も

僕自身は誰の中でも家のイメージ以上のものはなかった



「そんな、」




「そんなお気持ちでずっといらしたのですか凜々蝶さま…」






無意識に流れる涙を乱暴に拭っ た


天狐の左目はすべてを見透かす


そのせいで他人の記憶や会話が流れてくる

ただし、“意識をすれば”であって無意識の内に流れてくるなんて滅多にない

考えられる可能性は2つ


記憶の持ち主が酷く混乱していること



もう1つは



「私と似てるから、かな。」



彼女にしては弱々しい声だった







結局タイミングが掴めずに会うことはできないまま夜になっていた


部屋でシャワーを浴びて、飲み物を買いに行こうとすると電気が消えた。




「停電か。」

仕方なく階段を登ると声がした。




「ククッ、最高のセキュリティを誇るセレブマンションだって聞いてたけどスカスカだったぜ?」


「なんだ、強盗か。」

この声は…



カチャッ


頭に何か突きつけられる


ゆっくりと確認それは銃だった





「よりによって妖館に入るとは不運な奴だ。」

「うるせぇ!」


バチンッ

頬を叩かれる


「…私に」

名前の瞳が妖しく輝く

「な、なんだこいつ…化け物…」

男は仲間の元へと駆け寄る



「…ここのセキュリティは貴様ら用ではない。私達にとって大した驚異ではないからな…しかし、」


凜々蝶を捕まえている男達を見て笑う



「私に手を上げた罪は貴様らの命程度では済まされないぞ?人間ごときが!」


カッと開かれた瞳に男達は怯えるように後ずさる


名前は一歩ずつ近づく


「来るな!撃つぞ!」

しかし名前は止まらない


「君、止まらないと!」


パァンッ


凜々蝶が声を荒げると銃声が響く


しかし弾は彼の手によって防がれていた





「凜々蝶さまに」










「銃口を向けましたね。」



それはとても冷たい声で名前からは笑みが溢れた

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