挨拶


その後野ばら達とも合流し強盗を警察に引き渡し、皆ラウンジに集まっていた

名前は眠気覚ましにコーヒーを飲んでいた

「あ、あの!」

凜々蝶は名前のいるテーブルにやってきた

「…なに。」


我ながら冷たい声だったと思う。

凜々蝶もすこし怯えていた。



「さっきの事はありがとうと言うべきか?」


「は?」

「しかし君が変化しなくても御狐神くんがやってきてくれたからな。だが一応…」

「アンタ、何様のつもり?やっぱ気に入んない。」


名前はカップを荒々しく置くと凜々蝶を睨み付けた

「“御狐神くんがやってきてくれた”?それは主人がピンチだったからでしょう?アンタが弱かったからでしょう?」


「なー名前、そこまで言わなくても…」

「連勝は黙ってて。」

「ひっど…」

「反ノ塚、部屋に戻るわよ。」

野ばらは名前凜々蝶を交互に見た後、そう言い連勝を引きずりラウンジを出ていった


「僕が、弱かったからだと?」

凜々蝶の白い肌に微かに赤みがさす

「そうよ、人間相手に捕まるなんて信じられないわ。双熾が怪我したのは誰のせい?SSの命を握っている事をキチンと理解しているの?」


一気に捲し立てる


「悪癖がある?真っ当な人間になるまで?その日が来るのはずっと先みたいね。」


凜々蝶は俯いていた

流石に言いすぎたかもしれない

「失礼ですが、今のお言葉を訂正してください。苗字さま、怪我は僕の不注意です。凜々蝶さまに罪はありません。」


「…SSは黙っていて。」



御狐神は何か言いかけたが口を閉じた

「じゃあ…僕は、どうすればよかったんだ。」

凜々蝶は泣きそうになるのを堪えながら言った

「…後悔より彼にお礼を言う事が先じゃないかしら?」

凜々蝶は顔を上げて御狐神に向き合った

「…助けてくれてあ、ありがとう。」

「いえ。」

御狐神は嬉しそうに笑って言った

「凜々蝶さま、僕以外にも言うべき方がいらっしゃるのでは?」

「…そうだな。」

2人のやりとりを横目に冷めてしまったコーヒーを飲む


「さっきは…ありがとう。それと、初めまして。」

「初めましてじゃないわよ、おチビ。」


「チビ…き、君はまさか入口で会った失礼な男!?」

凜々蝶はショックを受けたように言った

「男?ふざけないで私は女よ!」

「すまなかった…しかしあの時声が低かった気が…」

「…失礼なのはどっちよ、私はこれで失礼するわ。」


空になったカップを持ち上げ席を立った

「4号室の白鬼院凜々蝶、です。」


エレベーターに乗り込む直前に聞こえてきた声に振り返らずに答える。

「8号室の苗字名前、よろしく。」










凜々蝶さま…

わかっていたつもりだったけど面と向かって見てしまうとなんとも言えない気持ちになる


苗字さま

わかっていたんだよ。

私の名前を呼ばないこと位

でもさ、すこしくらい期待してもいいよね?

私は、あなたを守るためにここにやってきたんだから。








「御狐神くん、彼女とは知り合いなのか?」


「いえ、先日会ったばかりですが何か?」

「彼女は君の事を名前で呼んでいた。親しいのかと思っただけだ。」

僕は返す言葉が見つからずただ微笑んだ。




僕も彼女もすべてリセットできたらどんなにいいか。

僕の言葉も彼女の涙も

あの日をまるごと全部、なかった事にできたら

貴女と僕が出逢う事はなかったのでしょうか?


「では、僕はこれで失礼いたします。」


僕は嘘をついてしまった


彼女にも貴女にも。


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