知らない¨彼¨



「お逃げください名前さま!」

「でもっ!」

「彼の分まで生きるのでしょう?ここで立ち止まっていてはいけません!」

「…ごめん、双熾!生きて!また戻ってくるのよ!」

微笑んだ彼を最後に私は背を向け走った








ノイズが入り場景が変わる


「…俺を殺せ、名前。」

「…なんで、」


「俺はもう長くない。お前に手をかけるかもしれない…だから処分してくれ。」

「なんでよ…嫌」

「名前、俺はお前に仕えることができて幸せだった。…覚えておいてくれ。俺の心は永遠に名前のもの…」


……の手が私の手を掴み刀を引いた


……の血飛沫が私を真っ赤に染めた







あれ、誰だっけ?

双熾と…


誰だかわからない。

霧がかかったみたいにその人の顔だけ見えなくて




でも、

刀を引いた感覚はかなりリアルで気持ちが悪い


まるで現実みたいだ。

双熾を置いて逃げたことは事実だしなんの疑問も抱かないけれど

私が殺したあの人は私の名前を呼んで、


ズキンッ

「…っ!」


頭痛を言い訳に思考を停止させた


一番簡単で


今までも、そうやって生きてきた











「おはよう。」


ラウンジに入ると凜々蝶と御狐神、連勝、野ばらがいた


「おはようあだ名ちゃん。」

「はよーす。」

「おはようございます。」

「ふん、朝から元気だな…おはようございます。」

欠伸をして席につくと野ばらが朝食の乗ったトレーを持ってきた


「名前ちゃんの好きなフレンチトーストよ。」

「ありがとう。あれ、みんな制服…今日から学校?」

「そうだが、君も学生だろう?行かないのか。」

「もう半年も行ってないから今更なんだよね。」

「半年も?何かあったのか?」

「凜々蝶さま、そろそろお時間ですが。」

返答に困っていると御狐神が助け船を出してくれたので話はそこで終わった。

「…そういえば卍里達帰ってこないね。」


「あんな男たち帰ってこなくてもいいわよ。」


「あとで連絡してみよう。」












「あれ、双熾?」

昼過ぎに外に出ると御狐神が女性と話していた


「彼女かな…でも凜々蝶がいるし…」


女性が双熾の首に腕をまわし、双熾も女性の頬に手を寄せる



「!」

2人の唇が重なる






気づいた時には私は双熾と女性を引き剥がしていた


「双熾、凜々蝶が見てる。」

門の向こう側では凜々蝶達がこちらを見ていた


「…凜々蝶さま。」




凜々蝶に言う

「双熾に失望した?それとも軽蔑した?」

心を視なくてもわかることだが。

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