( カップルではありません )
「れー、ちゃん」
「んー」
「れーちゃん、れーちゃん」
「んー」
「ふふー、呼んだだけー」
ある昼下がり。というか午後2時。授業中である。が、サボリ2名。零原はあぐらをかいてゲーム。その足に頭をのせて寝てるのが一ノ瀬。
「下からみてもかっけーね」
「んー」
「れーちゃんのここ寝やすいー。眠いー」
「んー」
「いーにおいだなあ」
「んー」
なんて平和なんだろう。
凶悪な不良と凶悪な電波が絡むとなんの化学変化か相殺されて平和な空気を生むのだ。だが単体だと凶悪なことには変わらない。変わらないのだ。
「お、おい。後輩よ」
「なんすか」
「なんか俺にだけ冷たくない?クールすぎない?」
「………そんなことないですよ」
「なにそのわざとらしい間は!てかあの子たちは俺らが周りにいるって知っててあんな風にしてんの!?うそでしょ!」
「ほっとけばいいじゃないですか」
そしてこちらにもサボリ2名。とても先輩後輩の関係にはみえない。
「だって、だって、みんなの憧れ零原くんの膝枕って!」
「……………」
「うぜえって顔した!今うぜえって顔した!」
「うぜえ」
「うぇ、ちょ、いって、舌噛んだ!」
「うるさいですよ。膝枕、俺で我慢してください」
「こんな乱暴な膝枕ってある?!」
赤城の頭は鷲掴みにされ強制的に後輩の太ももへ突き落とされた。痛そうだ。
「れーちゃんあいつらなにやってんの?」
「さあいちゃついてんだろ」
そう言う彼らは一ノ瀬が零原のうなじに手をあて下に引っ張り、その顔にさわさわとキスをしている。
「おまえらに言われたくねええええ」
「うっさい」
「手厳しいっ」
びしりと赤城の眉間に後輩の手刀が振り下ろされる。やっぱり赤城は赤城である。
「赤城さんてよくみると奥二重ですね」
「あ、まじで。よくわかんねえや」
「……………」
「ちょちょちょ、なにしてんのカラコンずれるっ」
「いや、まぶたあげたら二重になるかなって」
「なんないからっ!てか二重じゃなくても俺はイケメンだからいいの!」
「……………」
「やめて!その目はやめて!」
「ゆーき、みてみろ。バカップルがいるぞ」
「れーちゃんはきれいな二重だね」
「おまえもな」
「赤城さん負けましたね」
「勝ち負けじゃないでしょ!いやあの2人にはたとえ俺が二重でも負けるけど!」
「よくわかってるじゃないですか」
「誰か俺の味方はいないのか!」
今日も今日とて平和である。