天覇絶槍の妹
『室などと申した所で所詮はやれ子孫繁栄だやれ家の為だとかで子をしこたま産む道具に過ぎぬ。あのような男、再起不能にしてくれる』
「ちょっとちょっと姫さん。嫁いで早々そんな考えでいいわけ?」
『嫁いで早々まさか迎えが来るとは思ってもおらなんだ。よし、甲斐に帰るぞ』
「駄目に決まってるでしょ!俺様は大将と旦那に指示されて様子を見に来たの!」
『フッ、迎えを寄越すとはお館様も兄者も気が利く』
「だから違うって!姫さんは今日からここがお家!」
『こんな寒い所にいられるはずがなかろうが。何ぞここ超寒いだりぃ』
「うわっ!口悪くなった!」
『大体、何故私が嫁がねばならんのだ。玉の輿が我が夢と幼き頃から何度も兄者に申し上げていたではないか』
「充分玉の輿じゃん。だって奥州の筆頭よ?」
『だが天下はとれぬ』
「うわぁ…竜の旦那可哀想…」
『伊達に天下は取らせぬ』
「言っておくけどね姫さん。今回の婚姻は伊達と武田の和平の証でもあるんだよ?間違っても竜の旦那に毒を盛って殺『誰が伊達を殺して武田に天下を取らせると申した』危なっ!ちょ、いきなり苦無投げないでよ!」
『天下を取るのは伊達でも武田でも、ましてや織田でもない』
「…はい?」
『天下は私が取る。日ノ本全土の者を跪かせてみせよう!』
「もっと駄目だよ!」
『何故だ。別に構わないだろ』
「あのねぇ…姫様は確かに男勝りでそんじょそこらの男より強いし女らしさ皆無かもしれないけど、戦は男がするものなんだよ?」
『私を含め、前田の奥方、上杉の忍、織田の奥方並びにその妹。戦う女はまだまだいる』
「駄目なものは駄目!」
『くどいぞ佐助。私は天下を取る事にした。今決めた。もう覆さぬ』
「姫様の頑固者!」
『よし、兄者に頼み更に減給してもらおう。兄者は私の頼みは断らぬ』
「それは姫様が昔から旦那に…ああもう分かりました!天下なり何なり取ればいいですよ!ただし俺様はちゃんと止めたし関わりませんからね!」
『小言を言う母がいなくなって精々するわ』
「姫様の馬鹿!」
『というわけで伊達政宗。私は天下を取る』
「Ah!?」
『手始めにお前を倒し、この奥州を天下取りへの足掛かりにしてくれよう』
「ちょ、待」
そんなわけで、幸村の妹が天下取りのために旦那(筆頭)の命を奪おうとするブッ飛んだ女が何かする話