アラサー2



『皆、今宵は存分に飲むが良い!天下統一を成しえた祝いぞ!』


盃を持った右手を高くあげれば、兵達も皆同じように右手を高くあげた。
名だたる部将達を倒しては傘下に加えて領地を広げて行き、ついに天下を一つとする事が出来た。一揆や謀反といった暴動が起こる事はなかったが、統一までの道のりは果てしなく長かった。
小さな一国から始まり、東西南北全てを治めるのには大層の時間と労力を費やしたものだ。
おかげでめっちゃ逞しくなりましたけど何か?しかも、統一までの間に何組か結婚してリア充になりましたけど何か?妾なんか未だに独り身ですけど何か?婚期更に延びましたけど何か文句でもあると言うのならば今すぐ表へ出るがいい。妾の薙刀の錆にしてやろうではないか。


「大将のお前があまり呑まずしてどうする」

『三成。あぁ、すまんな』

「構わん」


リア充爆破!と(心の中で)唱えていると、三成が隣に座り、盃にお酒を注いでくれた。
……全国の三成ファン様まじごめんなさい。妾今めっちゃいい思いしてる!何これ乙ゲーみたい!夢小説みたい!


『そなたにも注ごう』

「…まさか、大将自らに注いでもらえるとはな」

『妾は友として酒を注ぐのだ。苦汁を嘗めあった三成には感謝してもしきれぬ程ぞ』

「おっと、そいつァ俺にも言う言葉じゃねぇのかい?」

『慶次』


左隣りに三成が座り、右隣りには慶次が座った。ちなみに真ん中は妾。
何このイケメソサンドイッチ、超鼻血もん。皆ごめんね!妾すっごくいい思いしてる気がするよ!戦国一いいポジション確保しちゃったっぽい!


「俺ァ、あんたの名が知れ渡る前から側にいたんだぜ?」

『勿論、慶次にも感謝しておる。そなたの武勇には何度も救われた。妾も見習わねばな』

「嬉しい事言ってくれるねぇ」


ぐしゃぐしゃと頭を撫で……いや、慶次なりに撫でてるつもりでいるのであろうが、ぶっちゃけ妾からしたら髪を乱されているとしか思えん。いいけどさ、別に。
慶次に乱された髪を手で戻しながら酒を飲んでいれば、突如左から手が延びて来て、乱れを直すのを手伝い始めた。


『どうした三成』

「俺が直そう」


…え?
え、こやつ今何と申した?
妾の耳が正しければ、俺が直そうと申したか?誰ぞ、今のが聞き間違いであったと証明……する必要ないっスね、はい。三成さん無表情で髪直してます。ありがとう三成!そしてごめんなさいね三成ファン!

ていうか、同世代の慶次に頭を撫でられた挙げ句、同世代の三成に髪を直されている妾ってぶっちゃけどうよ。
こんだけ女に優しけりゃ女の一人や二人寄って来そうなのに、何だってこいつらは未だに独身なんだ?


『…のぅ…慶次、三成。そなたら、何故妻を娶らぬのだ?』


そう質問をすると、慶次は持っていた盃を落として少量の酒をぶちまけ、三成は髪を直していた手が止まった。
え、なになになに?もしかしなくとも、妾とんでもない質問しちゃった感じ?


「……俺ァ、喧嘩にしか興味がねぇからだな。誰かと祝言を挙げるなんざ考えた事もなかったねぇ」

『阿国がいるではないか』

「あの人は、誰かの室になんざ入らねぇ人さ」

『そういうものか?』

「そういうモンだな」


言われてみればそうだね。無印の時の阿国のEDの多さには初め笑った物ぞ。その分、2ではまさかの無双演舞無しで正直言って戸惑ったものよ。
蘭丸にも戸惑った…男の娘だったのが何かちょっと逞しくなっていたからビックリした。2の蘭丸を見た友人の第一声が「お蘭の女々しさ行方不明ー!」だったのは今でもはっきり覚えておるわ。
おっと、話が脱線してしもうたな。妾うっかり。


『ならば、三成は何故だ?』

「俺は……天下統一以外に興味が無い」

『そなたも慶次と似た理由か』

「それに…」

『それに?』

「……何でもない」


ちょ、言えよ三成。気になるから言えよお前。
しかも、言いかけてやめるとか何かのフラグみたいだから止めぬか。
よく恋愛ゲームとか夢小説であるような、お前の事が好きだから…なんて言えるわけねぇだろ…的なリア充チックな展開には絶対に持って行かせんぞ。リア充フラグなど、妾が全力でボキバキと折り曲げて違うエンディングへ持って行ってやるわ。


『…色男共が揃いも揃って独り身とはな』

「お、あんたに色男と言われるたァ嬉しいねぇ!」

「…独り身と言うのであれば、お前にも言えた事ではないか」

『……三成』

「何だ」

『今日は寝れぬと思えよ……妾の最も言われとう無い言葉堂々の一位を申した以上、記憶を失う程までに酔わせてその服全てひん剥いてやるわ!』

「なっ…!」

「いいねぇ!なら、二人で飲み比べと行こうじゃないか!」

『覚悟せよ三成!』


きっと、室に入って慎ましく生きて行くよりも、男と飲み比べをして馬鹿騒ぎする方が妾には合っているのだろう。
そう思わなきゃ行き遅れな事を認めらんないって!



end.




天下統一直後の宴。



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