02

来神高校に入学してからというもの、いつ学校や街中で喧嘩をけしかけられるか分からない、そんな状況に置かされていた。俺は怒りで我を忘れると、制御の出来ない馬鹿力を発揮するため喧嘩においてまず負けることはない。どんな大人数を相手にしようと、だ。だが俺は喧嘩が強いからと言って喧嘩が好きな訳ではない。むしろ暴力は嫌いだ。毎日のように喧嘩をして何百人とぶっ飛ばしてる俺が言っても説得力がないかもしれないが、事実だ。俺は普通の生活をしたいだけなのに、そんな俺を嘲笑うかのように毎日誰かしら絡んできて、平凡には程遠い日常を過ごす。
そして今日も俺は喧嘩に巻き込まれる。



Overlap




「テメェが平和島静雄だな」

「ちょーっと強ぇからって調子乗ってんじゃねーぞ!!」

下校中、駅へと向かう途中で、また絡まれた。俺は何もしてないのに、だ。一体毎日毎日なんだって言うんだ。まるで俺を待ち構えるようにしているこの野郎共は。またあのノミ蟲の仕業か?大体俺は調子になんか乗っちゃいねぇ。そりゃ手前らの方だろうが。本当にイライラする。
このまま逃げて振り切ってやろうかと考えながら辺りを見渡しざっと相手の数を数える。他校の制服を着た男が2、4、6、8、10、12……、とその途中で俺は目を留めた。
男達が着ているブレザーの一面のグレーに埋もれかけている紺色。よくよく見れば少し奥に複数のブレザーの男に囲まれた、来神高校のセーラーを着た女の姿が見えた。ニヤニヤと笑う男に囲まれ、口を手で塞がれ、腕を壁に押し付けられ、体を触られて、瞳に涙を溜めながら必死に抵抗している。
きっと運悪くここに通りかかって、俺が来るまでのこいつらの暇つぶしに捕まったのだろう。

ふと、女が俺の存在に気付いてこちらに目を向ける。今にも涙で溢れそうな瞳が俺を縋るように見つめる。そして、顔を動かして口に当てられていた男の手を振り払って、必死に絞り出した精一杯の大きな声と共に涙が零れ落ちた。

「………たすけ…っ!」

けれどその言葉は1人の男が顔を叩いたことによって遮られる。



その光景を見た瞬間、幼い頃のある記憶がフラッシュバックする。
苦い、苦いあの記憶。


骨折してた俺を見て牛乳をくれたあの人。
パン屋の優しい彼女。
男に殴られてて俺は、俺は……。










そして、俺は理性を手放した。



bkm
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