邂逅

▼Chapter2

( __Smoking is not permitted here. )







「あ、シーカー!……と、オークも。おかえり!」
教会本部。世界各国に存在する祓魔師の所属する総本山である。エクソシスト達は此処に住み、日々訓練に勤しむ。
一国の城と称してもおかしくないほど巨大で美しく、しかし過去に幾度となく悪魔との戦闘により多くの血を流してきたそこには、近寄りがたい独特の雰囲気があった。
その一階はエントランスとなっており、任務を終えたエクソシストの報告、任務受注手続きの場であり、彼らのちょっとした交流所も兼ねている。
「おー、セルシュ!俺の帰りを待ってたのか!ん?」
「貴方の帰りを待ってくれている人がいるとは初耳です」
「あー、シーカー君、お前は黙ってろ」
シーカーの憎まれ口に、オークが口をとがらす。
「オークの帰りなんて心配するわけないでしょ。私が案じてたのはシーカーよ」
「『なんて』って……お前なぁ」
二人の帰投を迎えたのはセルシュ――肩にわずかに届かない、ふわりとしたゆるい金髪と明るい茶色の瞳を持つ、白衣を纏った知的な女性だった。
彼女の姿を見るなり顔を綻ばせてふらふら近寄っていくオークを一蹴し、セルシュはシーカーのもとへ駆け寄る。
三百六十度、全方向からシーカーを舐めるように見ていくセルシュ。
セルシュは教会専属の女医である。エクソシスト達の体調管理、緊急時の手当てなどが彼女の主な仕事だった。
オークとは旧知の仲であり、彼の相棒でもあるシーカーを一番気にかけているのもまた、彼女だ。
「何度も繰り返し言っていることですが、その視線、どうにかしてください……。そして僕の体調も特に問題ありませんよ。ではこのまま部屋に上がるので。失礼しますね」
セルシュに背中を向け、カツカツ足音を立てながらエレベーターへと向かうシーカー。
本当は石壁に叩きつけられた後頭部の痛みがひどいのだが、その痛みの経緯を死んでも話したくないという意地が勝り、セルシュの看護を受けるより自室で眠ることを選んだのだった。

シーカーの乗ったエレベーターの扉が閉まったことを確認し、オークはエントランスの古びたソファーにどっかりと腰かけた。
「あーあ、疲れたなあ。……タバコ」
コートの内ポケットから煙草を取り出してくわえる。ライターはどのポケットに入れたかなと、体をひねって探していると、
「エントランス内は禁煙よ」
白くて細い指先が、オークのくわえた煙草を奪った。代わりに目の前に差し出されたジュースの缶を、オークはひったくるように奪う。
「セルシュ」
そのままセルシュは、オークの座っているソファーの端に、横を向いた状態で軽く腰かける。
「足元が若干ふらついてたわ。頭部に強い打撃でも受けたのかしらね」
オークはセルシュをちらりと見た。聞き返さずとも意味は分かる。シーカーのことだ。
「まあな。……俺がやった。勘弁しろよ、必要があったからやっただけだ」
わざとじゃないさ。そう言ってプルタブを開け、一気に液体を喉に通す。
セルシュがオークに、シーカーの事について話しに来るのは珍しい事ではない。
セルシュは殊にシーカーの事を気にかけており、任務遂行の過程についてオークに不満を漏らすことも少なくなかった。オーク的には、口を開けばシーカー、シーカーと、少し面白くないのだが。
「……いくつだっけ、彼?」
「19だ」
「19、ね……。シーカーはまだ若いから、可能性はいくらでもある。本当にこの道で、よかったのかしら」
今日はどうやら、オークへの文句を言いに来たわけではないらしい。
「何が言いたい」
オークはソファーに投げ出した体を起こし、缶をテーブルにおいて足を組む。
「確かに、彼の《瞳》は唯一無二のもの、私達はあれを手放せはしない――けれど、それが彼の人生を縛る理由にはならないわ。
彼はあの若さですごく優秀ね、あなたのパートナーになれるくらいに。でも経験の差は歴然、あなたに追いつこうと焦燥を感じているのかしら。時折すごく不安になるの。危なっかしくて――今にも消えてしまいそうで」
死に急いでいるようで。
「だから、俺があいつのパートナーなんじゃねぇのか」
『だから』。シーカーは危っかしくて儚くて、そしてとても尊い存在「だから」。他でもないオークが組んでいる。セルシュの知る限り、精神、身体の両面から見て教会で最強とも言えるオークが。
「………」
「それともなんだ、俺じゃ不安だってのか?」
「……いいえ」
セルシュはふう、とため息をついた。前髪を軽くかきあげながら立ち上がり、オークの向かいのソファーに腰を下ろす。
「ごめんなさい、少し感傷的になってしまったようね」
「……いいや?むしろたまにそういう隙がある方がいい。完璧でクールな美人なら、なおさらだ」
「さて、真面目な話をするわね。件の《アクアホリック》についてだけど」
オークを涼しくあしらい、オークの旧友としての顔から教会内の一医師としての普段の様子に戻って、セルシュは話し始めた。




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無駄に長いのでまだまだ続きます
新キャラ美人なおねいさん登場ー!

白背景+灰色って見にくいかなー
黒字にしようかどうか迷ってるこの頃

朝起きて腕に虫が居てウォアァァアアッ!てなって叩いたらホクロでした
夏とか毎年叩いてるからねコンタクト入れてないから眼も見えないし見分けつかないってんだ



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