『君はドルチェ』全8ページ


「はい、お待たせ」

「すご……恭介先生ってお料理得意なんですね」


目の前に並べられたのはナスとまいたけの和風カッペリーニとベビーリーフと生ハムのサラダ。

「一緒にメシ食おうぜ」なんて言うからお言葉に甘えて「じゃあイタリアンがいいです」と車に乗せてもらった。てっきりファミレスかオシャレ居酒屋かと思ったら着いた場所は恭介先生のマンションだった。

デザイナーズブランドらしく、モノトーンのオシャレで落ち着いた部屋だ。男の人とタバコの匂いがする。


「何か作ってよ。外食ばっかりでさ、このままじゃ栄養バランス悪くて死にそう」

「え!わ、私が作るんですか!?」

「裸エプロンとは言わないからさ」


当たり前ですとぷりぷりしながら冷蔵庫を開けてみたのだけれど、何を作っていいかわからなかった。仕方なく恭介先生がジャケットとネクタイを放り投げてキッチンに立ったのだった。何か手伝おうかと思ったけどあまりの手際の良さに、出る幕はなさそうでしょんぼりテレビの前へと落ち着いた。


「いただきまーす」
「Buon' appetito」
「ぼ、ぼな……?」
「召し上がれってコト。お前イタリアンがいいとか言ったクセにサイ○リヤしか行ったことないだろ」


う……おいしいからいいんだもん。そんなイタリア人シェフのお店とか、私の身の丈には合わないと思うし。


「おいし……すごい、和風でさっぱりしてるのにコクがあって。っていうか外食ばっかりなんて嘘じゃないですか。料理上手な男の人って素敵ですよね」

「いいから食えよ。冷めるぞ」


冷めるって冷製パスタなのに。もしかして褒められて照れてるのかな。

彼ならトーゼンって顔でふんぞり返りそうなのに、可愛いところもあるんだ。


「ふふふっ」

「なんだよ」

「おいしいですよ、恭介先生」


照れくさそうな先生を覗きこんでたっぷり目を見ながら言うと顔を赤くした。

そんな恭介先生も新鮮だけれど、私も男の人に料理を作ってもらうのは初めてだ。

……私もお料理がんばらなくちゃね……こんな経験、嬉しいけど恥ずかしい。






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