「烏丸くんのせいでしょうが!もう、着替えなんて持ってきてないのに……」
「乾くまでオレと遊ばん?ハダカでな」
腰にあった手をお尻のほうにずらして顔を近付けてくる。シルバーの瞳に吸い込まれてしまいそうで怖かった。
「もう!馬鹿っ!!」
ありったけの力で無理矢理ロッカーを出る。幸い廊下には誰もいなかった。
こんな所、見られちゃ誤解されるわよね。
「待ってぇな!生徒指導室!あそこに制服あんねん。ついて来て。生徒が勝手に借りたらあかんやろ?」
「しょうがないなぁ……で、それどこ?」
「こっち!」
私の手を引いて歩く。いや、歩くにしては速い。
少し小走りになりながらついて行った。
あまり目立たない場所に『生徒指導室』のプレートが見えた。
鍵はかかっておらず、中はテーブルと椅子と物置みたいなロッカーがいくつか。
「ここにな、制服とか体操服はいってんねん。卒業生の寄付なんやて。昔は制服改造する奴おったからここで没収されとってん。はいコレ、杏珠ちゃんも着替ぇな」
着替えーなって、これ体操服と短パン?
ちょっとイヤかも。
でも、仕方ないか。
「あっち向いてて」
「ハイハイ」
烏丸くんも横で着替え始めてる。ブラまでぐっしょりで、仕方なく全部取った。なるべく見えないようにもぞもぞと着替え終わる頃には彼も乾いた制服を身に付けていた。
「カワイイやん。似合ってんで」
「嬉しくないよ……」
「脚キレイやし、現役でイケるて」
さすがに高校生には見えないだろう。でも懐かしいな。
厚めの生地のおかげで乳首はなんとか見えてなくて安心した。
「なぁ、なんでここに来たん?完全アウェーやろ。前のオンナのもすぐ辞めたし」
今までずっとヘラヘラしてたのに急に真面目な顔をした。一々驚かされる子だ。
「就職浪人だったから天の助けだよ。アウェイだって思った事はないし、みんな優しいよ」
「そうなん。上手くやってんねんな……オレはあかんわ」
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