走っていたからか彼の鼓動がよく聞こえる。
私を抱く腕にクッと力が込められた。ん?と彼の顔を見ると、突然のキス……
(……!)
静かに、でも強引に舌をねじ込んで。ピアスが変な感じ……
すぐ側には先生方がいるのに、こんなの困る。
彼の舌を少し噛んで抵抗を見せて、キッと睨むと唇は離れた。
ホッとしたのも束の間、今度は首筋にキスしてくる。
そんな所に唇が触れたら……変な気持ちになっちゃうじゃない……
それは彼も同じみたいでぴったりとくっついた体の一部が硬く変化したのを感じた。
恥ずかしくてかあぁっと頬が火照る。元気な子、と笑えるくらい私に余裕があればいいのに。
ロッカーの外で二人の声が遠ざかる。どうやら諦めたみたいだ。
「キミ、なんて事するの」
「だってキスしたくなってんもん」
「……それに、なんでこんなに濡れてるの?」
「プールで遊んでただけー面白かってんけど怒られたわ」
「全く……とにかく着替えよう?予備くらいどこかにあるわよね」
ロッカーを出ようとするのに彼は私を抱きしめたまんまで。
胸を押してもニヤニヤしてるだけ。本当になんなの、この子は。
「仁やで。烏丸仁な。杏珠ちゃん」
「烏丸くんね。名前知っててくれてありがと。でも寺内先生でしょ?」
「名前で呼んでぇな。それからな、杏珠ちゃんもその格好はマズイんとちゃう?」
そうだ。私もとばっちりで濡れてしまった。
シャツが貼り付いて気持ち悪い。プールくさいし……
「ブラ透けてんで」
嬉しそうにそう言ってジロジロと胸元を見てくる。下着見てはしゃぐなんてやっぱり高校生だ。
- 25 -
≪back