恋占いの石
2014/03/07 04:36

「ねえ、この石はなんなのよ?道のど真ん中にふたつもあるなんて、通行の邪魔じゃない」

あたしは、道のど真ん中にある、膝小僧くらいの高さの石を指差していった。
石はふたつあって、ひとつ目の石の延長線上、数メートル離れた場所にふたつ目の石がある。
そして不思議なことに、この石のまわりには人が集まり、友達や周りの人に補助してもらいながら、対岸の石の方に目をつぶって歩いている。
…ただの石じゃないのかしら?
あたしが不思議に思っていると、隣にいるアルスが言った。

「恋占いの石、だって」

「恋占いの石?」

「うん。…片方の石から反対側の石に目を閉じて歩いて、無事たどりつくことができると恋の願いがかなう石なんだって。一度でたどりつければ早く恋が成就し、二度三度となると恋の成就も遅れる。人にアドバイスを受けた時には人の助けを借りて恋が成就する…って書いてあるよ」

アルスのくせに、よく知っているなと思ったら、なーんだ、看板を読んでいたのね。
そしてこの石の間を歩いている人たちは、恋愛祈願をしている人たち。
やっぱり、好きな人と恋を成就したいわよね。
恋する乙女として、恋愛成就を願う気持ちはわからなくもないけれど…

「ばっかみたい。こんなことで恋愛が成就するわけないじゃん。恋愛なんて、自分の頑張りと、相手の気持ち次第じゃないの?」

「はあ」

あたしの意見に、まぬけな返事をするアルス。
もうっ!こんなだから、あたしの気持ちにも、まるで気がつかないのよ!!
普段からポケーッとしているけど、恋愛事に関しては、さらに超鈍感のお・こ・さ・ま!
なんの因果で、こんなヤツに長いこと片想いをしているのやら…。
…それでも、好きなんだもの、仕方ないわよね。
そうだわ!恋占いの石、本当にご利益があるのかやってやろうじゃないの!

「あたし、この恋占いの石、やってみるわ!」

「…へ?ばかにしてたのに??」

「うっさいわね。アルス、あんたはあたしのサポートしなさい!あたしが恋を成就させることができるか否か、鍵を握ってるのはあんたなんだからね!セキニン重大なんだから、わかる?!」

「あ、うん…」

実際に、あたしの恋の成就の鍵を握っているのは、他の誰でもないアルス自身だけど…。
あたしは、石の前に立ち、目を閉じた。
目を閉じて歩くのは不安だけど…

「マリベル、ゆっくりでいいよ。まっすぐに歩いて…」

すこし頼りないけれど、安心する優しい声が、あたしを導いてくれるから平気。

「あともう少しだよ。あと三歩、二歩…やった!反対側についたよ、マリベル!!」

「ふふん、美少女マリベル様だもの、当然よ!」

「あはは、本当によかったね!…あ、あの、さ…、マリベルは…好きな人がいるの?」

「は?」

「その、恋占いの石をやったから…さ…」

アルスってば、今さら聞くわけ?
好きな人は目の前にいるあんたですけど!?
どうしてこう鈍感なの???

「べっつにー。あたしが誰を好きだろうと、あんたにはカンケーないでしょ!」

『アルスのことが好き』と、素直に言えば良いのに、口を開ければツンとして、こんなことばかり…。

「そ、そうだね、変なこと聞いてごめんね…」

あたしにそういわれて、素直に謝ると、そのまま口ごもってしまったアルス。
そうやって、すぐに引き下がらないでよ。
誰が好きか気にならないの?
あたしに興味がないの?
なにさ!恋占いの石なんて、全然ご利益ないじゃないのさ!!
心がモヤモヤして、嫌な気持ちでいっぱいになる。
気まずい雰囲気の中、先に口を開いたのはアルスだった。

「僕も…恋占いの石、やってみようかな?」

「はあ?アルスが?!」

「うん…」

恋だの愛だの、鈍感で無関心そうなアルスが、そんなことを言うなんて信じられない!!

「ふーん。…あんた、好きな人がいるの?」

あたしが冗談混じりに聞いてみれば、アルスってば、顔を真っ赤にして小さくうなづいたの。
どこの誰に想いを寄せているのか…、気になる。
ますます心にいやなモヤモヤがひろがっていって、なんだか苦しい。

「…今、僕の目の前にいる女の子…」

「…え?」

「マリベルのことが…好きなんだ」

耳まで真っ赤に染めて、真剣な瞳であたしを見つめて話すアルス。
突然のアルスの告白に、あたしの心臓は跳び跳ねた。





アルスのことを鈍感と言いつつも、実はマリベルも鈍感だった、って話です。
長い妄想文にお付き合いありがとうございました〜(笑)

さて、今日は無事に家に帰ることができるのだろうか…?
悪天候だから不安だな…。
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