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Zauber Karte

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失恋は女を強くする


「ねぇ、どう?面白い?」
「・・・・」


夕暮れ時の学校の図書室で、私は、もくもくと私の書いたミステリー小説を読んでくれている工藤くんにがっついた。


「ねぇ!黙ってないで答えてよっー!!」
「うっせーよ!今、良いとこなんだからっ!!」
「ご、ごめん。」


感想が待ちきれず、工藤くんを怒らせてしまった。
怒るくらい面白い小説なのかな・・・そんな反応されたら期待してしまう・・・
私はハラハラとしながら工藤くんが小説を読み終わるのをまった。
しばらくすると、工藤くんはトントンと机で原稿用紙を整えて、私の前に差し出した。


「・・・・で、どうだった?」
「あぁ、面白かったぜ!トリックもなかなかだったし。でもよ、この主人公の探偵の名前もっと良いのないのかよ?雑渡昆奈門って・・・」
「へんかな?面白いかなと思って・・・」
「名前に面白さを求めなくて良いんだよ!ギャグ漫画じゃねーんだからっ!」
「そっか・・・じゃあ、工藤くんが主人公の名付け親になってよ。」
「はぁ?」
「ダメかな?」
「そんな大事なこと俺が決めていいのか?」
「工藤くんとの思い出にしたいの。」
「へ?」
「もうすぐ卒業で、もう会えなくなっちゃうでしょう・・・」


少し困った顔をする工藤くん。
私は工藤くんの顔を黙って見つめた。
私は工藤くんが好き。
でも、彼には毛利さんがいる・・・
2人はまだ付き合ってないみたいだけど、工藤くんは毛利さんの事が好きらしい。
今、この瞬間でさえ、ドキドキするのは私だけ・・・工藤くんにとって私はただのクラスメート・・・
でも、このまま、この恋を終わらせたくないわけで・・・少しでも工藤くんを引き留めたくて・・・私のない知恵を絞って考えた作戦。
私のことを覚えていてほしい。
一時でも、工藤くんが私のこと考えてくれたら幸せだなって・・・・
私は今までのことを思いながら、泣きそうになるのを我慢して工藤くんの返事を待った。


「名前、わかった。俺で良いなら考えてやるよ・・・だから、泣きそうな顔するなよ・・・」


工藤くんがポンッと私の頭に触れた。


「ありがとう、工藤くん・・・」
「礼を言うのはまだ早いぜ。良い名前考えてやっから、待ってろよ!」
「うん。楽しみにしてる。」
「じゃ、俺、帰るから。」
「愛しの彼女が待ってるもんね。」
「バ、バーロッ!」
「あー、顔赤くなった!可愛いよね、工藤くんって。」


私の精一杯の冷やかしに、工藤くんは笑って去っていった。

次の日の朝、私が学校に着くなり、眠そうな工藤くんが私に話しかけてきた。


「よー、名前。」
「おはよー、工藤くん。どうしたの?眠そうだね・・・」
「あったりめーだろ。寝ずに考えてたんだから・・・」
「え?」


ホントに?私のために?
キュンッと胸が高鳴った。


「ほれ、主人公の名前。一応色々候補があんだけどよ・・・一番のお気に入りがな、これ。」


工藤くんが私にメモ用紙を見せてくれた。
そこには、びっしりと名前が書かれていた。
工藤くんは、その一つの名前を指差した。


「いちどうしんく?」
「そう、良い名だろ。」
「こ、これ、アナグラムだよね・・・」
「た、単純か?」


苦笑ぎみな工藤くんが笑った。


「ううん。最高の名前だよ・・・・だって、私の小説の主人公が工藤くんなんだもの。一生懸命考えてくれてありがとう・・・嬉しくて泣きそう・・・」
「お、おい!んな、泣くなよ。」
「ご、ごめん。」


ポロポロと涙を拭ったけど、止まるわけもなく、これじゃ、工藤くんを困らせてしまう。
私はいたたまれなくて、教室を出ていった。
走って、走って、学校の屋上に辿り着いた。
嬉しいんだか、悲しいんだか、よくわからない感情がぐるぐると私の胸を締め付けた。
どうして、私はこんなにも弱いんだろう。
失恋したくらいで泣くなんて・・・泣きたくないのに涙が止まらなかった。
でも、この涙が止まったら、私は前を向いて歩こう。
工藤くんと笑って卒業しよう。
工藤くんよりももっと良い男を見つけるんだ。


bkm?

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