君を思う狂気はこんなに愛しい





ねぇ、もうあきらめてよのアスラン視点です





高校の合格発表の日。
掲示板に押し寄せる人たちを前に俺は辟易としていた。

新設校が次々とでき、少子化も手伝って受験倍率が低下しつつある昨今において、勉強から部活動、課外活動や海外研修などさまざまなことに力をいれているこの学校の受験倍率は、毎年、高倍率をキープしていた。
そしてそれは今年も例外ではなく、大勢の学生が受験し、教室が足りなくなったという噂まである。当然、入学できるのは用意された教室の椅子と机の分だけ。大多数が合格するかもわからないというのに、そうまでしてでも受験したいという人が後を立たない。

本当にそれだけの学生が受験しているのだろうか、と半信半疑ではいたが、公表されている倍率に嘘はなかった。
そして俺は冒頭の状態に戻るというわけだ。



はぁ、とため息をついて、この人垣に突っ込むことを決めたその時、傍らの人物が目に入り、ちらりと視線をやると自分と同じように呆然と佇んでいた。
手に持った受験番号が見えて、気がついた時には声をかけていた。

「よければ見てきましょうか?」
「えっ……」
「受験番号、俺と近いみたいです、し……」
言いながら内心驚いていた。いや、驚いたという表現はあまりふさわしくないと思うが、適切な言葉が出てこない。ただ、言葉尻があやふやだったのは確かだ。


『一目惚れ』なんて、気持ちを自覚できていない人間の勘違いとしか思っていなかった。
中学の友人たちにも、どこか冷めてると言われ続け、自分自身もそうだと思っていたし、たった15年しか生きていないが、自分は一生恋愛なんてものには縁がないのだと思っていた。

だが、自身に湧き上がる感情。一時も目を離したくないと心が訴える。
これに名前をつけるとしたら、それしかないだろう、と思った。


これが、彼――キラ・ヤマトとの出会い。




今できることはすぐにやる、後回しにしないという教育方針で育った俺は、あの受験番号確認の際に覗き見た名前を覚えて、クラス確認の際に目を皿のようにして探した。
まさか同じクラスになるとは思っていなかったけれど……好都合だ。

入学式の前に呼び出して想いを告げれば、思っていたとおりの反応をされた。まあそうだろうな、いきなり男が男に告白というのは、引かれて当然だ。
そもそも長期戦は覚悟していたから、そこはあっさりと引き下がる。
しつこくして嫌われるなんて、一番したくないからな。



入学式を終え、レクリエーションや新一年生の部活も決まり、いよいよ通常授業が始まった。ちなみに俺は特定の部活動には所属していない。興味のある部活は見当たらなかったし、生徒会に勧誘されたこともあったからだ。
まあ、何より彼がバイトのために帰宅部に入ったのを知ったからだけれど。

クラスメイトたちに挨拶しながら、教室に入ると、珍しくキラがすでに登校していた。
何やら思い悩んでいるらしく、頭を抱えている。
それを見られていたようで、後から来たクラスメイトが、「ヤマト、今日の数学当たるんだってよ」と教えてくれた。
なるほど。授業内容は特別難しい、という気はしなかったが、担当教諭は些細なミスでも間違えると嬉々としてその場に立たせて嫌味を言う小さい奴だった。強いて良い点を挙げるとするならば、こうして当てる生徒を日にちと出席番号を掛けて当てているので、予習すればいいという点か。

そうやって意識せずキラを見ていたら、彼がふっと顔を上げたので、慌てて顔を背けた。
誰だって話し掛けずに見られていれば、気味が悪いというものだろう。そうでなくても入学式の件があって、俺は警戒されているのだから。






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