短いの | ナノ
現パロサスケとこたつでみかん


 「みかん」
 「いや、自分で剥きなよ」
 「嫌だ起き上がりたくない」
 私にみかんの皮を剥けと要求するサスケに、この末っ子の甘えっ子が!と罵りたくなるのをぐっと堪える。
 テレビから視線を下にずらせば、サスケがこたつに入ってごろりと横になっているのが見えた。目さえも閉じて完全にリラックスモードだ。上下合わさった睫毛は、女子かと思うほど長くてびっしりで羨ましい。
 「ねーこはこたつでまーるくなる・・・ってか?」
 「・・・んあ?」
 サスケが間抜けな声を上げて、器用に片目だけを開ける。
 それを見つめていると、なんだかサスケがだんだんでかい猫に見えてくる。・・・うん、猫ならばこの態度も可愛い、許せる。ならば希望通りみかんを剥いてやることもやぶさかではない。
 こたつの中心にある大きめの木の器にピラミッド型に積まれたみかんから一つを手に取る。片手で一度軽く放り上げる。つけっぱなしのテレビの中では、最近よく見る芸人がヘタな食レポを披露していた。それを受けて、流行りのアイドルだとかドラマの宣伝に来た俳優だとかの笑い声が湧き上がる。
 みかんのお尻の方に爪を立てる。湾曲した切れ目ができた。切れ目からペリペリと皮を剥がす。細胞を壊すたびに、さわやかなような、甘ったるいような香りが増した。てろん、とオレンジ色の皮が、なりそこないのヒトデみたいな格好でこたつの上に手足を伸ばした。剥き終わったそれを丸のままサスケの顔に近づける。
 「ん」
 ぱちり、サスケが瞼を押し上げる。
 「・・・白いのも」
 「これ、栄養があるらしいよ」
 「もしゃもしゃするからヤダ」
 「・・・わがまま」
 サスケはまた目を閉じてしまった。うわあ、誰だこいつを甘やかして育てたの。あ、イタチさんか。ならば仕方ない。あの人のブラコンは末期だ。
 優しい私は白い筋も丁寧にとってやる。めんどくさいな。
 取り終わった綺麗なそれを今度こそとサスケの目の前にずい、と押し出す。
 「・・・あ」
 目を閉じたままサスケが口を開いた。食わせろ、ということらしい。どんだけこいつはめんどくさいんだ。だがここまで来たからにはもうなんでもやってやろうという仏の心で私はみかんをひと切れづつ切り離し、サスケの薄い唇の間に放り込んでやった。サスケはゆっくりと咀嚼する。眠たいのか、全ての動きが緩慢だ。ごくん、と飲み込んでからまた口を開けたのでまたその中に押し込んでやる。その繰り返し。
 コマーシャルが流れる。シャンプーの広告らしい。華奢な女性が豊かな髪を風に遊ばせている。綺麗な人。手を止めてしばらく見入る。
 「ハナコ」
 サスケがまどろんだ目で私を見ていた。
 私はまたみかんをひと切れ、サスケの口に入れてやった。
 なんだ、そうか。私もこいつを甘やかしていた。






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