短いの | ナノ
ナルトが好きだった女とシカマル

※ヒナタ→←ナルト←夢主←シカマル



私とナルトはいわゆる、腐れ縁というやつである。
アカデミー時代、何がどうして仲良くなったかは覚えていないが、ナルトと私はよく共謀して悪戯に励んでは二人で叱られていた。といっても悪戯を思い付くのはいつもナルト。私はといえば、誘われては乗っかりを繰り返していただけだった。
この腐れ縁はその後も長く続き、下忍になって初めての班編成でも一緒の班になった。問題児のナルトの存在が浮かないくらいの濃いメンバーで組まれた班に、私はいつもひいひい言っていた訳である。こればかりは幼なじみではじめから連携のとれていた猪鹿蝶が羨ましかった。
中忍試験だって、私が受けた理由は「一緒に中忍になろうぜ!」というナルトの一言が決め手であった。私も大概馬鹿な女だ。二つ返事で頷いた私に向けられたカカシ先生の白い目は今でも忘れられない。曰く、「少しは自分でかんがえなさいよ」と。
そんな私がナルトの二年間に及ぶ修行の旅に着いていかなかったのは、一重に、「絶対強くなって帰ってくるからお前も強くなっとけよ!」とナルトに言われたからである。その一言で火が着き、必死になって努力を積み重ねた私に今度はサクラから白い目が向けられた。曰く、「あんたも単純よね」と。
そしてカグヤたちと戦った大戦後も私達の腐れ縁は相変わらず続き、お互い多忙でたまにしか会えなかったが、一緒に一楽を食べに行ったり修行したり一楽を食べに行ったり一楽を食べに行ったりと交友が続いていた。そんな私に今度白い目を向けたのはシカマルである。曰く、「お前それでいいのか?」と。
しかし、月での戦いの後、私達の時間は前よりもさらに減った。ナルトに彼女ができたからだ。相手はヒナタである。彼女は長年の想いを見事実らせたのだ。
それからはその短くなった時間の中で、デートにはどこがいいとかプレゼントには何がいいとかナルトの恋の相談に乗ることが多くなった。まあ私も恋愛経験が少ないながらに、リサーチして教えてやったり背中を押してやったりしたものだ。
そんな私に白い目を向けたのはまたもやシカマルであった。曰く、「お前本当にそれでいいのか?」と。
そして今、ナルトとヒナタは婚礼衣装に身を包み、みんなに祝福されて式を挙げている真っ最中だ。青い空に紙吹雪がまっている。元がいい上に丁寧に化粧を施されたヒナタは文句なしに綺麗だ。その隣でナルトが世界で一番自分は幸福な男だと言わんばかり笑っている。そんな若い男女を多くの人々の歓声と拍手が包んでいた。

「お前、これでよかったのか?」
その輪から少し離れた場所で、隣に立っていたシカマルが私に尋ねた。
「何が?」
「何が・・・って・・・とぼけるならその顔どうにかしてから言えよ」
彼がちらりと向けた先の、私の目からはぼろぼろと止めどなく滴が流れ落ちていた。それでも私は笑顔のままだ。
「大丈夫よ。親友の結婚に喜び感激しているようにしか見えないはずだから」
「・・・そういう問題じゃねーだろ」
「他に問題なんて何もないわ」
はあ、とシカマルが大きく息を吐く。
「馬鹿な女だな」
「馬鹿は私だけじゃないわ。皆私の気持ちに気づかなかったんだもの。好きでもない男の言うことこんなに聞いてやる訳ないってのに」
不意にナルトがこちらを見る。私は笑みを深くして手を振った。それを見てナルトがくしゃりと笑う。だがすぐに他の人に声をかけられて私からは視線がはずされた。
「で、お前はこれからどうすんの?」
「どうするって何が」
「これって、失恋ってことだろ」
「はっきり言うのね。でも失恋したからって何かしないといけない訳じゃないでしょ」
「そりゃあそうだが・・・ほら、新しい恋、とかさ」
「昨日の今日じゃ、そんな気持ちになれないわよ」
「残念。弱ってるところにつけ込もうと思ったのに」
「・・・・・・!?」
「気づかなかったのか?やっぱり馬鹿だな。好きでもない女をこんなに気にかける訳ないってのに」
にっと口の端を持ち上げてシカマルが笑うのを私はまじまじと見つめた。
「・・・本当に?いつから?」
「自覚したのは中忍になってから」
「・・・知らなかった・・・」
「だと思った」
遠くで明るい声が沸き上がる。ブーケトスをするらしい。未婚の女性たちがきゃあきゃあと楽しげに、それでいて真剣な眼差しで花嫁の前に集まる。掛け声とともにブーケが青空に放り投げられた。
「・・・あんたも馬鹿な男ね」
「知ってるよ」
「私ずっと、ナルトが好きだったのよ」
「ああ、知ってる。だから虎視眈々とこの時を待ってたんだよ」
空高く舞った花束は、緩やかに落下して誰かの手の中に収まった。ブーケを手にした女性は喜びの声をあげた。
「狡いのね」
「そうだな。・・・だからお前は俺を利用していいんだぜ」
シカマルの指に私の指がからめとられる。
輪から外れた私達のことなんて、誰も見やしない。こちらと向こうは、見えない壁で隔てられているようだった。
ぎゅう、と手に力を込める。
「・・・じゃあ、少しだけ。・・・少しだけ、甘えてしまおうかな」
声に嗚咽が混じる。私の笑顔が崩れる。きっと、酷い顔をしている。こんな晴れの日に似合わないような。
だけど、もう少しだけ泣いたらきっと、ちゃんとあいつらを祝福できるはずだから。






prev next


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -