「本庁の刑事恋物語5」




萩原「理世ちゃん、じんぺーちゃんお待たせー」


 ソフトクリームとコーヒーを二つ両手に持ち歩いてくるのは萩原研二という男だ。彼は垂れ目が特徴の甘いフェイスを持ったイケメンだ。「絶対に倒産しない」という理由で警察官を目指すという少しお気楽な性格で、理世の隣に座っている松田陣平とは幼馴染だ。萩原は、理世にはソフトクリーム、松田にはコーヒーを渡す。理世以外はコーヒーなようで、子供扱いされてるなと少し拗ねる。まあ、子供舌な理世はコーヒーは飲めないからたっぷりのミルクと砂糖を入れて飲むタイプだ。小さい頃からソフトクリームを渡せば喜んでいたので、高校2年生になった今でも出かけるたびに買ってくれるのだ。お礼を言うと、ウィンクで返される。ドキッと心臓が跳ねる。なるほど、これがモテるわけかと納得した。


萩原「次はなに乗ろうか?」

松田「そろそろ絶叫乗ろうぜ」


 萩原と松田、そして理世は現在トロピカルマリンランドに来ていた。萩原と松田が非番だったので、萩原がずっと行きたがっていたマリンランドに遊びに来たのだ。「彼女と行ってこい」と松田と理世は言ったが、「いないのしってるでしょー!俺は二人と遊びに行きたいのー!」と駄々を捏ねていた。

 理世は普段から騒ぐタイプでないのだが、こういう"おでかけ"というのは大好きだった。萩原が「3人でデートだね」と言うので、きちんとおしゃれしてきた。襟付きのチェックのワンピースに、白の二つ折りソックスには黒のリボンがついている。チェーンデコレーションがついたローファーには少しヒールが入っている。高身長の二人に少しでも目線に近づきたくていつもより高めだ。目線が近づいた気がしないが…。

 マリンランドのマップを開き、萩原と松田が話しているのを余所に理世はある視線に気づく。


松田「理世、気付いたか。」

『ああ、見られているな。』

萩原「えー、そう?」


 ジロジロ見られるのはいつもの事だったが、何だか今日は違う視線だった。萩原は不思議そうに辺りを見回すが、その視線がわからずに肩を竦める。理世はある人物を見つけると目を閉じ笑った。


『私たち以外の違う人物を追いかけていたようだな。』

萩原「え?」


歩美「あ!理世お姉さんと松田刑事と萩原さんだー!!」


 3人がその声に視線をやると、少年探偵団と佐藤と高木が驚いた顔で立っていた。


佐藤「どうしてここに?」

萩原「俺たちはデート中なの。お二人さんは子供連れでデートかい?」


 荻原がデートというとコナンが異様に反応する。おいバレるぞと松田がコナンを睨む。理世はその視線を無視して、少年探偵団に視線をやり、佐藤を見る。


『見た感じだと、佐藤刑事と高木刑事がデートしていたところに阿笠博士を入れた少年探偵団に遭遇したんだろ。博士がいないということは何か用事でいなくなり、二人で少年探偵団を見る事になったってとこかな。』

松田「へー」

高木「へっ」


 理世の言葉に高木は項垂れた。どうやら当たっていたようだ。ベンチに座る理世にコナンが近づき、手を引っ張る。理世はコナンの視線を合わせる。白鳥警部にチケットを貰ったらしい。この視線の多さは、佐藤と高木のデートを邪魔するために刑事たちが集まったということかと結論づけた。だが、この視線の多さは4、5人ではない。この人数が一斉に休みだということはないだろう。


『障害多き恋ってわけだな。』

コナン「ははは…てか理世!デートなんて聞いてねぇぞ」

『なんでいちいち言わないといけないんだ。』

コナン「お前の兄貴だからだよ!」



光彦「コソコソなに話してるんですか?」

元太「この姉ちゃんとコナンすっげぇ仲良いよな」


 全く過保護な兄だとげんなりする理世に松田が肩を叩く。小さい頃からの知り合いの萩原と松田でさえ、新一は警戒しているのだ。懐に入れると甘い理世は何かと無防備で心配な新一だったが理世には理解されない。横入りしてくれた光彦のおかげで話は中断した。「後でみっちり聞くからな」という声に聞こえないフリをして、萩原と松田の腕を掴む。


『じゃあ私たちは行くから』


 「行っちゃうんですね」という高木の声に心の中で謝りながら、その場から逃げた。萩原は不思議がっていたが、松田は笑っていた。




松田「観覧車見ると嫌でも思い出すよな」


 観覧車に乗ると、松田はぼそっと呟く。
 今の観覧車は音楽が好きに流せるようで、萩原はいいムードになる音楽を探していた。理世は音楽はクラシックしか知らないがそれに付き合う。テキトーに洋楽でも流しておけとポチポチと勝手にタッチパネルを押す理世に萩原は泣いた。


萩原「陣平ちゃんと理世ちゃんが喧嘩したやつね」


 懐かしいねと笑う萩原。蒸し返すかと睨む。3年前の爆弾魔の事件のことだ。爆弾魔が観覧車と病院に爆弾を設置したというFAXを送ってきたのだ。一つは観覧車で松田が単独で乗り込み、もう一つは理世が見つけたのだ。その数日前に松田と理世は喧嘩までいかないが気まずくなっていた。事件当日に言い合いの末、爆弾を解体して降りてきた松田の前で高熱で気絶。ボロ泣きしていた記憶もある。


『人生であんなに泣かされたのは初めてだったな。』

萩原「え、まじか。じんぺーちゃん責任取らないと」

松田「ハギのときも泣いてただろ…あ、なんか下が騒がしいぞ」


 テッペンについても選曲中の萩原をよそに、松田は地上が騒がしいのに気づく。理世と萩原も覗く。「ショーやってる時間帯なんだけどな」と呟く萩原。理世たちは花火みたさに観覧車に乗ったのだ。ほとんどの客はショーのためにスタジアムに集まってるはずだ。


『誰か追いかけられているな。』

松田「あ、確か指名手配中の麻薬ディーラーを追っかけてるって言ってたな」

萩原「さすが捜査一課、てか忘れたのかよ」

松田「仕方ねえだろ、俺その案件関わってねぇし」

『どうやら園内にいた沢山の刑事はそのディーラーを追いかけてきていたようだな。多分だが佐藤刑事たちの邪魔をするのもあると思うが』


 「へー、大変だなぁ」と他人事のように興味のない松田に苦笑いする萩原と理世。少しは理世の推理を疑ってほしかったのが、二人は一ミリの疑わずに信じてくれる。そんな姿に嬉しい気持ちになりながら、ディーラーの件は新一がいるからいいかと花火を見る事にした。

 休みの日まで事件に追われる高木たちに理世は合掌した。


萩原「えっ、誰か死んだの!?こわい!!」

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