05
蘭「まさか理世もここにいるなんて思わなかったよ」
『お互い運ないね』
まさか米花シティビルが左右対称の建物ではないことなど予想していなかった理世は見事に巻き込まれ、建物から出られなくなっていた。蘭に動かないように言いつけ、理世は爆弾を探すことにした。松田のことだ、きっと助けに来てくれるだろう。バッグにしまっている赤いハンカチを握りしめ、そんな期待と少しの不安を胸に歩き出した。
松田「ボウズ、それ貸せ」
コナン「えっ」
松田「俺が行く」
コナンの頭を撫で付けると松田は爆弾の設計図を持ち走っていった。取り残されたコナンは松田警部が元爆処のエースだったことを理世から聞いたことを思い出した。
瓦礫が崩れ落ち、道を塞がれながらも理世のいる階まで走る。松田は先ほど切れた電話を再度かけ直す。
『〈もしもし、〉』
松田「理世!!!お前無事なのか!!!」
不安に煽られていた松田は理世の声を聞いた瞬間叫んだ。そんな焦っている松田に理世は『無事だよ』と笑う。松田は、理世の読み通り森谷帝二が犯人だったことや双子の兄が推理した動機などを話した。そして、米花シティビルが左右対称ではないことを伝える。
『〈先ほど爆弾を見つけた。〉』
松田「はぁ!?」
『〈じんぺーさんのことだ。私のところまで来て助けようとしてくれているんだろう?〉』
松田「あたりめぇだろ、もうすぐ着く」
『〈だが、ドアや階段、エレベーターも全て塞がれていて外に出られなくなってるんだ。だからね、〉』
『〈私が解体しようと思う〉』
そう静かに言う。彼女は冷静だ。高校2年生が爆発事故に巻き込まれ、目の前には爆弾があるというのに。松田はぐっと反対の言葉を飲み込んだ。なぜなら、松田がついた非常ドアは歪んで開けられなくなってしまっていたからだ。
松田「はさみもってるか。」
『〈うん。〉』
松田「非常ドアの前についた。そっと近くまで持ってくるんだ。」
理世は蘭や他の人たちに離れるように指示する。このまま解体しなければ爆発してしまう時限爆弾だということを説明する。不安そうに近寄ってくる蘭に牽制し、理世はゆっくり爆弾を移動させた。
『じんぺーさん、きこえる?』
松田「ああ、わるいな。俺がデートに誘わなきゃお前がこんなことしなくて済んだのに」
『あら、私が失敗するとでも?私には頼もしい元爆処のWエースの片割れがいるのに』
松田「ははっ、お前はどこまでもいい女だな」
そう軽口を叩く。松田の声を非常ドア越しに聞いて、安心したのか指の震えが止まっていた。鞄からソーイングセットのはさみを取り出す。松田の指示で、蓋を開け、コードを切っていく。とても長い時間だ。時間的にはそんな長く無い、たかが40分程度。とても長く感じた。授業を受けるよりも短いはずなのに、それ以上に長く感じた。
松田「最後に黒いコードを切るんだ」
『じんぺーさん止まらないよ。あと赤いコードと青いコードが残ってる。』
松田「なんだと!?」
『片方はブービートラップか』
松田「ああ、」
『赤か青か…』
すると、時計塔が12時の鐘を鳴らした。
松田「誕生日おめでとう、理世」
『えっ…』
松田「本当は直接会って言いたかったんだがな」
『また言ってくれ、生きて帰ってから』
そう言うと、理世は最後のコードを切った。