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『けんじさん、これから忙しくなるね』

萩原「え!?なにそれ!!」


 萩原研二が不吉なことを言うのは、歳の離れた妹のように可愛がっている工藤理世だ。5月3日、親友の恋路を応援するべく映画を進めたのは萩原だった。そんなデートの当日、悲しくも理世は警視庁に赴いていた。いつもよりおしゃれしているのは松田のためだろうか。華奢な彼女に良く似合うコーディネートだ。


『私は目暮警部に呼ばれ、警察病院にいかければならない。高木刑事。』

高木「はいっ!!」


 いくつも年下のはずなのに高木渉は彼女には敬語だった。なんでも美人すぎて威圧感があるらしい。ビシッと姿勢を正し返事をする高木に理世は可笑しくなり、笑っていた。高木と一緒に捜査していた佐藤美和子警部補は苦笑いだ。


『犯人はあなたが最初に怪しいと感じた女性で間違っていない。』

高木「へっ!?」

佐藤「でも彼女はアリバイが、」

『彼女は嘘をついていたのだろう。そしてそのアリバイを証明した同僚は彼女の元彼だ。彼女を守るために嘘をついている。証拠を探すなら、彼女の指の傷と凶器の傷口を照合するといい。ちなみに凶器は明日捨てる予定だったのだろう。彼の家のゴミ捨て場に行くといい。』

佐藤「高木くん!いますぐ裏を取るわよ!」


 どたばたと走り去る佐藤と高木。萩原は理世を見る。現場にも行かず、刑事たちが調べたことや状況を聞いただけで犯人を特定してしまう手腕に脱帽だ。

萩原「なんで彼女が犯人だとわかったんだ」

『高木刑事が言ったんだ。"一緒に飲んでいた同僚と彼女の証言が噛み合わないような気がする"と、おそらく同僚は彼女の嘘に気付いた。それに彼女が殺害を犯してしまったということも。だから咄嗟に言ったのだろう。"彼女は大好きな日本酒を自分の家で飲んでいた"。店だと嘘がバレてしまうかもしれないからね。だが、それは空回りだったのだよ。付き合っていたからお互いの好みの酒はわかっていたらしいが、苦手なお酒までは把握しきれていなかったようだかね。"彼女は日本酒が好きでね"という同僚の証言が仇になったのだ。』

萩原「なるほど、彼女は日本酒好きの彼に無理に合わせて飲んでいたのか」

『高木刑事が違和感を感じたのはここだよ。彼女の家にも同僚の家にもたくさんのお酒があるのに、同僚が証言した日本酒が彼女の家には1本も無いのだから。』

萩原「さすが女子高校生探偵だね」


 理世は一度も探偵と名乗っていないのだが、いつの間にか「女子高校生探偵」と言われるようになった。目立ちたがり屋の双子の兄とは違い、理世は名声には興味がなかった。彼女が好きなのは、謎を解く爽快感だけだ。


萩原「そーいえばなんで俺が忙しくなるの?」


 萩原が言っているのは冒頭での理世の言葉だった。佐藤と高木が走り去った後、理世は警視庁を出る準備をしていた。どこかに電話をかけると、萩原を見て笑った。


『爆処に所属しているけんじさんは、これから爆弾の解体作業で忙しくなると私は読んでいる。毛利探偵のところに居候しているコナンくんが爆発事故に巻き込まれている。』

萩原「えっ、あのボウズ無事なのか?」

『幸い頭を打った程度だったらしい。そこで私はじんぺーさんと一緒に緑台警察病院に向かう。』


 理世と萩原は、非番のはずの松田の車にのり緑台警察病院に向かった。松田は元爆処というのもあり目暮警部に応援要請があったのだという。明らかに不機嫌丸出しの松田に苦笑いした。理世は松田の車に乗り込むとすぐにチャンネルをまわし、爆発事故の情報を集めるためニュースを見ていた。

 理世が病室に入ると、少年探偵団の子供たちとコナンの居候先の毛利小五郎、そして阿笠博士がいた。そこに目暮警部と白鳥警部、松田と萩原と理世が加わった。結構な人数だ。挨拶を交わし、白鳥警部に促されるまま理世は椅子に座った。


歩美「ねぇ、理世おねえさんいつもよりおしゃれしてるけど、どこかでかけるの?」

光彦「そうですね、松田警部も私服ですし」

元太「仕事中じゃねぇのかよ」


 おませな歩美の質問に理世は動揺した。部屋の視線は松田と理世に釘付けだ。萩原は耐えきれず笑い声が漏れている。松田は居心地悪そうにそっぽを向いていた。


萩原「理世ちゃんは今日デートなんだよ」

コナン「なんだってぇ!?」


 萩原の言葉に反応するコナンに小五郎が「なんでお前が叫ぶんだ」とツッコむ。


歩美「もしかしてデートの相手って松田警部?」

萩原「歩美ちゃん鋭いね〜 松田のやつ、理世ちゃんが明日誕生日だからデートに誘ったんだよ」

歩美「わぁ、やっぱり〜!」

松田「萩っ、お前なぁ!!」

毛利「はて、似たような話どこかで…」

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