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松田「なあ、理世。5月3日空いてるか?」


 工藤理世は松田陣平とティータイムを楽しんでいた。松田とは小学生のころからの面識がある。理世が誘拐されそうになっていたところを松田と彼の親友である萩原研二に助けられたことから知り合いになった。理世は双子の兄同様、持ち前の頭脳で数々の事件を解決していた。今日も事件を1つ片付けた後だった。

 イングリッシュブレックファーストをミルクティーにするのが理世は好きだった。松田が奢ってくれたチーズケーキをつつき、優雅なひとときを楽しんでいた。松田はコーヒーと急いでいたため抜いてしまった遅めの朝食を食べていた。松田は、理世からみても容姿端麗だ。目鼻立ちのきりっとした美しい顔は、女性の目を惹きつけた。今でも店内の女性たちは彼に釘付けだ。


『5月3日…予定はなかったと思うが…』

松田「じゃあ夜22時に米花シティビルで待ち合わせな」

『夜…何かあるのか?』

松田「俺とオールナイトの映画付き合え』


 二枚の映画のチケットを差し出してくる。チケットと松田の顔を交互に見る。彼はどうやら照れているようで、頬が赤くなっていた。警視庁ではワイルド系のイケメンと持て囃されてるらしいが、そんなの影すら見えない。理世はチケットを受け取り、詳細を見る。


『へぇ、〈赤い糸の伝説〉か…じんぺーさん、結構ロマンチストなのね』

松田「うるせぇ」


 まさかデートに誘われるとは…赤い糸の伝説は、確か運命に結ばれる男女の小指と小指には生まれたときから赤い糸で繋がっているという伝説を題材にした映画だったはずだ。小説が映画化したもので、蘭や園子が騒いでいた気がする。理世は推理小説は読んでも恋愛小説は読まないので詳しくは知らないが、世間では結構話題になっていたはずだ。


『だが今とても忙しいのではないのか?』

松田「?」

『火薬庫から爆薬が盗まれたとニュースでね』


 理世が言っているのは、東洋火薬庫から大量の爆薬が盗まれたという事件だった。たくさんの警察官を動員したのにも関わらず犯人の手掛かりは見つからなかったのだ。


松田「さすが詳しいな」

『最近の放火事件も関連してるかもしないね』

松田「はぁ!?お前なんか知ってるのか?」

『いや、まだ推測の段階でしかないが…一つじんぺーさんに調べてほしいことがあるんだ』


 母譲りの端正な顔を綻ばせて笑う理世に長年の付き合いの松田は嫌な予感がした。彼女は存分に人使いが荒い。彼女が気になったことを調べるのはいつも松田や萩原の仕事だった。しかし、それは必ずと言って事件等の重要事項なことが多く文句は言えなかった。彼女の観察力で松田たち警察は大分捜査がすんなりと解決まで進むのだから。




松田「(こいつの誕生日のために有給もぎ取ってきたなんてカッコ悪くていえねーわ)」

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