風間隊の作戦室、メンバーが集まって新しい陣形を考えていたときだ。天才と名高い星野紫苑の戦闘方法を参考にしようとソロランク戦のログを見ていたとき、ふと風間隊の
風間「ああ、よく知っているな。」
三上「ええ!その噂本当だったんですか!?」
風間「そうか、噂になっていたのか…」
三上「でも、紫苑さんが隊長だったんですよね?
四年前って、紫苑さんは14歳ではないんですか?」
星野紫苑は現在18歳、現ボーダー設立時は14歳だった。
風間「ああ、紫苑が作った隊だったというのもあるが、紫苑が1番強かったというのが大きい。」
歌川「風間さんがそんなに言うってことは、本当に凄かったんですね。」
旧東隊が作られるとき、一緒に星野隊は作られた。当時の問題児をまとめるには東春秋しかいないとして作られた東隊とは違い、星野隊は14歳である紫苑が隊長を務め、他の隊員は年上という異例の隊だった。
現在のボーダーができる前、風間の兄である進がボーダーに所属していたので蒼也は紫苑とは面識があった。蒼也と会う前から紫苑は芸能活動をしていたので、迅悠一や小南桐絵ほど頻繁に会っていたわけではなかった。蒼也はあまり興味がなかったが、どうやら子役として売れていたらしくかなり人気があったらしい。
『そんなにおかしいですか?』
きらきらした垂れ目気味の瞳に蒼也が映る。
少し可笑しそうに笑う。まだ幼い顔つきだ。
蒼也はその質問が"どのこと"を指しているのかわからなかった。
『僕がボーダーにいることも、隊長でいることもですよ。』
風間「そうか、紫苑の
『
触れれば人間や物体から過去や現在の情報を読むことができるんです。』
体表面を接触させることにより、人間や物体から過去や現在の情報を読み取ることができる。対象物体と間接的にでも接触していれば対象になる。つまり、衣服越しや壁越しでも"人物"を対象にして読むことが可能である。しかし、読み取る内容は状況によって異なるため必ずしも万能というわけではない。
風間「お前の
紫苑は目を見開いた。
風間「
『へぇ、さすが風間さん。気づいたの忍田さんと、師匠ぐらいだったのに。』
そう、紫苑の
紫苑の情報の量は、計り知れない。人物の外見的特徴、記憶、感情、次にでる行動、etc.これが複数人になると紫苑は脳の作業領域は限界を迎え、目眩や発熱が起こるのだ。これに気づいたのは先ほど言った通り、現在の保護者である忍田真史と叔父である星野奏真だった。相棒である迅悠一や、旧ボーダー時代からの仲間である小南桐絵は知らない。
風間「なぜ言わない?俺はもうお前のチームの仲間だ。」
『……いつ、"いなくなる"かもわからないのに簡単に自分の弱点を言えないだけです。』
"いなくなる"の定義はわからないが、蒼也も知らない紫苑の誰にも言っていない秘密が故に言っているのだろう。それはいつか話してくれるだろうか。こんなに悲しそうに寂しそうにしている自身の隊長の信頼を得ることはできるのだろうか。
『え…噂になっていたんですか?』
風間「ああ、俺も菊地原に言われて知った。」
別段隠していたわけではなかった2人だったが、あまり自分のことを話さない2人だから段々と噂となってしまったのだろう。
紫苑と風間は隊を解散しても定期的に会うようにしている。それはボーダー基地のラウンジだった、風間隊の作戦室だったり、紫苑の部屋だったりする。
風間「もう隊を組まないのか?
俺たちは旧東隊とA級1位を争えていた。それは紫苑の力があったのが大きかった。」
旧星野隊のチーム戦術は紫苑の
紫苑の隊長としての能力は目を見張るものだった。
年上にも臆さない度胸、的確な指示、敵に合わせた戦術、対応力etc
弟子も紫苑の意思に反して増えて行った。
下を育てる能力は十分にある。
A級1位太刀川隊の射手出水公平は、紫苑の1番弟子だ。
その他の弟子たちもA級、B級で隊長になったりと功績を残している。
風間「紫苑は、東さんのように下を育てるべきではないのか?」
『はぁ…蒼也くんいつもそれいうよねぇ。色んな人に言われるけどさぁ
別に隊を組むのが嫌とかじゃないんです。』
紫苑にとって、旧星野隊は居心地のいい場所だった。解散理由は"紫苑と蒼也以外の隊員の就職のため"。それだけだと紫苑と蒼也の2人体制で行けばいいだろう。だが、日が経つにつれ、入隊してくる隊員が増えたため、風間が一隊員でいるのにはもったいなかった。風間のあの着いて行きたいと思ってしまう人望・人柄を紫苑は近くで見てきたから知っていたのだ。解散すると、すぐに紫苑はS級に昇格し、風間は風間隊を結成した。
『アイドル活動とボーダーを両立するにはS級でいたほうが良いんですよね。 僕の黒トリガーは後方支援向きですし、
でも、多分ですけどもうすぐアイドルも辞めると思うから、もう少しこのままでいさせてください。』
そう寂しそうに笑う紫苑に、風間は「そうか」としか言えなかった。風間が嫌いな何かを諦めるときの顔だった。その数週間後、とある事件で、風間はこのときのことを思い出したのだった。