「二宮隊オペレーター代理」

人間だしも風邪を引いたことがあるだろう。「ばかは風邪ひかない」という諺がある。
これは「ばかと呼ばれる人間が風邪をひかない」という意味ではなく、「風邪をひいても、その症状を自覚しない程の人間の鈍感さ」を例えている。現代では、読んで字の如く「ばかは風邪をひかない」の意味で用いられるようになった。
しかし、その広がりかたを見ると“もしかして”と思えてこないだろうか。「ばか」は「楽観的」とも見解できる。楽観的な人間はストレスを感じにくい、楽観的ではない人間に比べて免疫力が高くなると言われている。ストレスを感じると、病原菌と戦う細胞である白血球の機能が低下するため、免疫力が下がり感染症にかかりやすくなるのだ。



犬飼「stop, stop, stop!!!!」

『どうしたの?なんかわかりにくかった?』



紫苑の親友である犬飼澄晴は絶妙な発音は、資料すら見ないで喋り続ける紫苑を止めにかかる。


犬飼「なんでこんな話になったんだっけ?」


『なんでって、氷見さんが風邪を引いたでしょ?』

荒船「でも変わりのオペレーターはテストや用事やらで空いていない」

当真「それで、副作用で触れればなんでも使い方がわかる紫苑に声がかかった」

北添「二宮隊が今夜、防衛任務で」

辻「ラウンジでお昼を食べながら、打ち合わせをしていたら当真さんが“なんで風邪をひくんだ?”と紫苑さんに聞いたんです。」


犬飼「いや知ってたけど、説明ありがとう」



ボーダー内では18歳組と言われる犬飼たちだが、本当に仲良いなと思う犬飼だった。紫苑を軸に二宮隊である辻新之助+非番の隊員が集まっている。


『続けるけど…楽観的な人間にワクチンを接種した後、心理的ストレスを与えたにも関わらず抗体の数値が上がったという結果が出ているんだ。それにいつも前向きで明るくて笑顔でいることが多いのが楽観的な性格でしょ?笑うことが多いことで、免疫力を高めるNK活性が上がる結果も出ているんだ。』


穂苅「はい、質問です先生。」


ポップコーンを食べながら聞いていた穂刈篤が手をあげる。


『どうぞ、ぽかりくん』

穂刈「NK活性ってなんですか?」


『NKはNatural Killarの略で細胞の名前なんだ。
1975年に自力で働いて、癌細胞やウイルス感染細胞とかを初期段階で攻撃する細胞が見つかったんだ。だからNatural Killar、つまり生まれながら殺し屋って名付けられたんだ。』

荒船「なんでも知ってるな。」

『まあね。つまりNK細胞が活性すると?』

当真「風邪を引かなくなるってわけか。」

犬飼「当真…頭良くなったんじゃない?」

当真「会話に入りたかったから適当に言っただけだ。」

影浦「そりゃ当真は風邪ひかないよな」

北添「じゃあ、紫苑ちゃんは暫く二宮隊のオペなの?」

『そうだね。僕はオペレーターが本職ではないし、ひゃみさんが治るまでちがうオペレーターが回すんじゃないかな?』

犬飼「え〜、ひゃみちゃんが治るまでずっと紫苑ちゃんがいいなぁ」

辻「わがまま言わないでください、犬飼先輩。
紫苑さんは忙しい方なんですから。」


荒船「だが、辻は女子が苦手なんだろ?
氷見以外で大丈夫なのか?」

辻「はっ!!」

犬飼「今気づいたんだ……」


二宮「快談中悪いが、忍田本部長からの命だ。
紫苑、氷見が復帰するまでうちのオペレーターは頼んだ。」


そう言いながら、紫苑に忍田本部長の印が入った正式書類を渡す二宮。紫苑は忍田本部長直属のS級隊員で、紫苑のことは忍田本人しか動かせない。だから、今回のような防衛任務以外の他の任務として使う時などは"何をするか"、"どうして紫苑ではなければいけないのか"等を明記されている書類を作らなければならないのだ。
紫苑自身もめんどくさいと思っている。

だが、二宮は違うようで何かと可愛がっている紫苑と正式に一緒に防衛任務に当たれることが嬉しいようだった。氷見には悪いが、まるで紫苑が二宮隊に入ったようだと思った。


当真「ヒュ〜、こりゃ羨ましい展開じゃないか」

北添「合法で紫苑ちゃんをオペレーターとして使えるんだもんねぇ」


辻「ほっ……」
犬飼「他のオペレーターの子が代わりにやってくれたら、辻ちゃんが使い物にならなかったもんねぇ」
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