男の娘になりたくて 10

便座に座って鍵をかけた。
そうしてようやく一息つく。

「これがオナホか…」

それは有名メーカーのもので、お洒落でスタイリッシュのデザインだからか一見するとそれとはわからない。
棚にぽんと無造作に置いておいても、知る人ぞ知るで知らない人からすればお洒落なオブジェにしか見えないんじゃないかな。

「えと、ここにローションを注ぎ込むのかな?」

小さなそれの封を切り、ぶちゅうと中身を全部入れてみた。
それにしても、見れば見るほど見た目的には全く女性器のそれとは違う。

一応は彼女がいるものの肝心なところで踏み込めない俺はまだ童貞で、本物を見たことなんかないんだけどさ。
だけど、それはそれ。
これはこれ。

「――んっ」

準備が整ったところで、早速、使ってみる。

「うわっ…、な、なんだこれ」

触れ込み通り肉厚な壁が絡み付いて締め上げるような感覚に、思わず感嘆の声が漏れる。

や、やばっ。
めっちゃ気持ちいい!

ただ突っ込んだだけなのに、一気に再燃した熱が一点に集まる。

「はぁっ、はぁっ」

おもむろに抽挿を始めたら、ぐっちゃぐっちゃと初めて生で聞く音が耳に届いた。
鼓膜を犯されるような感覚に手の律動が止まらない。

ただ、こんな状態なのに何故だか彼女の顔は一切浮かばなかった。
女装をしているからなのか、ゆず、つまりは自分の女性器だと思って酷く興奮してるけど。

「ああんっ。おまんこ気持ちいいっ」

多機能を謳う手の中のものは、これだけでも十分気持ち良かった。
だけど、どこにあるのかは知らないけど、スイッチを入れたら中が振動したりうねったりするんだろうな。
そんなことを思いながら、律動する手を速めて行く。

「ふぁっ…いくぅ…っ。ゆずのおまんこイッちゃうよぉ…」

込み上げる射精感に思わず甘い溜息をついたその時、

「ねえ。それの正しい使い方、教えようか?」

そんな一言とともに、突然目の前のドアが開いた。


「…え」

一瞬、何が起きたかわからなかった。
何故だか俺を助けてくれたヒーローが、にっこりと人の良さそうな顔で笑いながら俺の目の前に立っている。

「え、え、なんで!?」

俺、鍵かけわすれた?!
いや、しっかりかけたよね!?

半ばパニックになりながら手の中のそれを無意識にぎゅっと強く握り締めたその時、

「な、なにこれっ!?」

カチッとスイッチが入ったような小さな音が聞こえたと思ったら、いきなり内部が振動を始めた。

Bkm
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